音楽雑文集


by yyra87gata

外タレ初体験?

 80年代は音楽と映像がリンクし始めた年代である。アーチストもレコード会社もMTVと呼ばれるプロモーション・ビデオに力を入れ、セールスを伸ばす戦略がとられ始めた。ビジュアルに訴えたことで得をした人、損をした人、ひきこもごもである。

 MTVが出てくるまでは、音楽の映像は映画でしか見ることができなかった。
「レッド・ツェッペリン/狂熱のライブ」「ウッドストック/愛と平和の3日間」「ヤァヤァヤァ!ビートルズがやってくる」「HELP!4人はアイドル」「レット・イット・ビー」「トミー」「真夏の夜のジャズ」「バングラディッシュ救済コンサート」 「ラストワルツ」「ポールマッカートニー&ウィングス/ロックショー」くらいが1980年までの主な音楽映画である。上記の作品を組み合わせ、名画座で1年に1回は特集が組まれていた。それをありがたがって毎回観に行くのである。
 クラプトンやジミヘンが動いていることに感動し、ジミーペイジのギターを構える姿にシビレ、ポジションを確認した。忘れないように急いで家に帰って、ギターのストラップを長くしたものである。映画館から家までの間、目に、頭の石に映像を刻んでおかなければならなかった。
 《ベストヒットUSA》が1980年頃から始まり、音楽の映像がグッと身近になった。しかし、そこに出てくる映像はあくまでもプロモーション・ビデオなわけで、どうしようもない音楽をくちパクで合わせるC調な歌が目立っていたように思う。要はただ単に、80年代ポップスが好きじゃないだけなんだけど・・・。
作り手は歌だけに集中していればよかった70年代と比べ、ビジュアルという仕事が増えてしまった。ビジュアルに向いてないアーチストもいるわけで、そんな人たちは苦痛な時代になったんだろうなぁ。

 僕はセールスプロモーションのビデオが嫌いだ。曲の解釈を撮影側の押し付けでイメージさせられることが嫌だからだ。よく映画より本で読んだほうが良かった、という場面に出くわすが、まさにあれと一緒である。音を聞きイメージを膨らませる。このギターは誰だろう?このリズムの刻み方はきっとあの人だろう、などと予想を立てながら聞く楽しみもあった。
映像の話に戻そう。・・・MTVが流行る前は音楽の映像はほとんどがライブだったように思う。
《ベストヒットUSA》の中にも「タイムマシーン」というコーナーがあり、ロックのクラッシックな映像を流していた。その映像はまさにライブであった。まがい物ではない、純粋な音楽という感覚で見ることができた。

 ビデオデッキが家庭に普及される前の時代、音楽を見ることは、イコール、ライブ演奏を見るか、前述の映画くらいしかなかった。そんな時、あるスポットが各地に出現した。
「ビデオ上映会」
ビデオを鑑賞するためのスペースが渋谷や新宿を中心に竹の子のように出現した。よく大手楽器店の店頭スペースでもビデオは上映されていたが、それはセールスプロモーション用のヒット曲のオンパレードであり、「ビデオ上映会」のマニアックなラインアップとは一線を画していた。僕の心は躍った。海外からの直輸入ビデオがほとんどなので英語、フランス語、スペイン語の字幕が出てくる。
クィーンのデビュー当時のスペイン公演の映像は、字幕がスペイン語だった。日本でイギリスのバンドをスペイン語字幕で見る。変な気分。
当時の僕達は、海外のアーチストは、レコードでしか聞いたことが無いため、動いているところを観たときは、素直に感動したものだ。ああやって弾いていたのか・・・とため息がもれる。
エリック・クラプトンとジェフ・ベックのギターバトル(シークレット・ポリスマンズコンサート)、ボブ・マーリーの地鳴りがするほどのライブ、ジョン・レノンのライブ(ワン・トゥ・ワン)、ボブ・ディランのローリングサンダーレビュー、ジャクソン・ブラウンのノーニュークスコンサート、キッスのデトロイト公演'78・・・
2本~3本観て800円くらいだった。

 学校の帰りによく見に行き、帰りの道玄坂のロック喫茶「BYG」でタバコをくゆらせることが当時の日常だった。
「上映会」は1本いくら、という換算で料金が決まっていたため、組み合わせにより見たくも無い作品を見せられる映画館とは違い、お得感があった。

 d0286848_2093463.jpg 1984年くらいからビデオデッキが急速に家庭に普及し始めた。その瞬間から「ビデオ上映会」が街から消えていった。ミュージックビデオの普及やレーザーディスクの開発など、ソフト面での充実とハード面でのデジタル化が音楽を変えていった。そして僕達の生活も変わっていった。
気軽に海の向こうのアーチストを見ることができる。そこには、苦労もなく当たり前の日常があり、片手間にディランやスティービー・ワンダーが拝める。便利になった分、真剣に見なくなったのも事実。昔は映像に飢えていた。所定の場所に行き、しかるべきものを支払い、食い入るように見ていたあの時代。人間は満たされてしまうと、駆り立てるものがなくなると、とたんにヤワになってしまう。

「ビデオ上映会」は僕の外タレの原点かもしれない。

2004年12月17日
花形
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by yyra87gata | 2012-12-12 20:09 | 音楽コラム | Comments(0)