音楽雑文集


by yyra87gata

ユーミンの3枚

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★『ミスリム』(1974) 荒井由実

 荒井由実のデビューアルバムは『ひこうき雲』である。もともと加橋かつみのスタジオミュージシャンとして音楽業界に入ったユーミンは、その洗練された作曲センスをキティレコードに認められ、レコードデビューする。バックミュージシャンはキャラメルママ(細野和臣、林立夫、鈴木茂、松任谷正隆)。デビュー作らしく初々しいヴォーカルと緊張感が漂っている。その緊張感を持続させつつ、少しだけの余裕とユーミンとしてブレークする寸前の勢いがセカンドアルバムの『ミスリム』から感じ取ることができる。バッキングはデビュー作と同様にキャラメルママ。そしてコーラスアレンジには山下達郎が参加している。
そしてサードアルバム『コバルトアワー』は、荒井由実の最大ヒットである「あの日に帰りたい」を収録する大ヒットアルバムになった。四畳半フォークと呼ばれた時代からニューミュージックへの転機にもなる歴史的なアルバムともいえる。その意味で『ミスリム』は誰にも翻弄されていない、荒井由実の等身大のアルバムではないだろうか。1曲目の「生まれた街」のセンスの良いアレンジはキャラメルママの真骨頂であるし、「瞳を閉じて」や「やさしさに包まれたなら」のメロディーラインなど丁寧に作られたアルバムである。


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★『時のないホテル』(1980) 松任谷由実

 結婚し、あっさり荒井姓を松任谷姓に変え、松任谷由実として2~3作を発表した頃のこと。聞き手は変化を求める上で「荒井の方が良かった。いや、松任谷になって洗練された。」などと比較を始める。しかし、名前を変えただけで音楽性なんて簡単に変わるものではない。18歳で音楽業界に入り、大学卒業間もなくファーストアルバムから親交の深かった松任谷正隆と結婚。かなり狭い世界の中で一般的な男女間の作品を創作している、といえる。もちろん独自の調査や優秀なブレーンがいるのだろうが、音楽性・世界観と言う意味でデビューからこの『時のないホテル』までが僕の中では「荒井由実作品」だと思っている。なぜならこの頃までの作風が「一途な気持ち、ちょっとだけヤキモチを妬かせる」など少女から女に変わるティーンエイジャーから大学生がモチーフであり聞き手のターゲットになっているからだ。この後の『水の中のASIAへ』『昨晩お会いしましょう』『パールピアス』へと続く流れはOLの気持ちを歌い、男を手玉に取る(?)くらいの強い女性像歌う作風に変化していき、メガセールスの女王として君臨していく。
そういう意味で『時のないホテル』は荒井由実の完成形として認識できるのではないだろうか。作風も内省的な曲が多く、賛否両論あるが、ひとつひとつの曲の水準は非常に高く、いまだにコンサートで取り上げられている曲も多い。「よそゆき顔で」「5cmの向こう岸」の詞は秀逸である。


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★『昨晩お会いしましょう』(1981) 松任谷由実

 1981年発表のこの作品は、2000年までの約20年間を突っ走る魁となった作品で、完成度が高い。何故2000年かというと、2000年以降はドリカムや若手アーティストへの世代交代が騒がれ、ユーミンの作風が定まらなくなってきた。また、プロデューサーを松任谷正隆から外人へ変更し、一層混迷し、セールスが激減したからである。セールスの伸びないユーミンはありえないことなのだ。
話を戻すと、この『昨晩お会いしましょう』以降の作品にはそれぞれのテーマがあり(OLのつぶやき、輪廻転生、任侠恋愛、リゾートミュージック、愛の戦争、宇宙観など)、その時代時代の男女間の定番を作り上げてきた。それは新井由実時代には無かったことである。
逆にいうと『昨晩お会いしましょう』から作風変化は無く、この1枚で完成形とも言える。後はテーマ別の金太郎飴状態だ。1流のミュージシャンとスタジオ、環境面においても最高の状態の中でユーミンワールドが開かれていく作品。そしてニューミュージックというカテゴリーからユーミンというジャンルを作り上げた頃の作品である。「カンナ8号線」「夕闇をひとり」「A HAPPY NEW YEAR」など秀作が並ぶ。

2005年6月16日
花形
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by yyra87gata | 2012-12-14 15:05 | アルバムレビュー | Comments(0)