音楽雑文集


by yyra87gata

『トライスクル』 ジョニー・ルイス&チャー

ライブハウスでのライブはコンサートと違って、開演時刻も少し遅いが、その分終了時刻も遅かった。ちょっと前までのホールコンサートは大体18時30分の開演で21時には終わっていた。多分、公共施設の貸し出し時間によるものなのだろうが、とにかく、アンコール含めて21時が目安だったと思う(今は条例の緩和かどうか知らないけれど、割合遅くなってきている)。
しかし、ライブハウスは関係ない。19時くらいからダラダラと始まる。休憩を入れたりしながら、22時くらいまで平気で演奏している。ジャズやブルーズはそれが顕著だった。
高校2年の時、ジョニー・ルイス&チャーを今は無き渋谷LIVE INNで観たことがある。
彼ら3人はとにかくマイペースな人たちなので、客も十分それを理解しており、全体的にリラックスした雰囲気が漂っていた。19時開演だったが、時間が来ても始まる気配は一向に見えない。その間、客はずーっと立って待っている。タバコを吸いながら、ビールを呑みながら・・・。僕と友人のW君も大人たちに習い、制服姿だったが、煙を吐いていた。
チャーを先頭に舞台に3人が上がったときは、20時を過ぎていた。何とルーズなことか!その後、ライブハウスはバケツの水をひっくり返す勢いの盛り上がりを見せた。みんな若かったし・・・。
1時間ほど演奏すると、おもむろにチャーがMCを入れた。
「ほんじゃあ、ここで休憩を取ります。みんなもリラックスしててくれ。酒を呑むとか・・・。売上に貢献してやってくれ・・・なんちゃって!」
と言ったかと思うと、舞台袖から椅子が三脚とテーブルが運ばれ、ビールが設置された。
なんと彼ら3人は、舞台で休憩を取り始めた!客は大爆笑。野次を飛ばすが、3人は客を無視し続け、タバコを吸いながら談笑している。3人が休んでいるところを客は見ている。変な構図である。
15分ほどした頃、チャーが言う。
「そろそろ、残業に取りかかりますか・・・。」

d0286848_6485399.jpg
3人はそれぞれの持ち場に戻り、またまた怒号のライブが始まった。
とても印象深いライブ体験である。コンサート会場には無いノリである。ちなみにこの日の彼らはとにかくぶっとんでいて、ジョニーのドラムソロでは10分間ずーっとスネアを連打していたり、ルイスはベースをリードギターのように弾いていた(ちなみにコアなファンの間では、ルイスはチャーよりギターが上手いとされている)。その後2回の休憩を挟み、ライブが終了した時は、24時を回っていた。当然、終電もなくなり、僕とW君は歩いて帰った。しかし家に帰らず、そのまま学校に直行し、朝方5時頃に到着、そのまま部室で寝ていた。
 このルーズさが日本のロックにはなかった。ロカビリー、GS、アートロック、関西ブルース、クロスオーバー・・・。ジャンルはいろいろあるが、無数のバンドの中でリラックスしながら音楽に接し、開放された精神(フリースピリット)を提唱してきた3人はどこにも属さない独自の創作作業(音楽)という神々しさがあった。
常にライブで勝負する3人が残したスタジオワークは、まさにライブそのもので、ほとんど一発録りに近い。また、3ピースということもあり、音楽性が制限されがちに聞こえるが、ただのロックに終わることなく、多彩な音楽性を披露してくれる。それは、チャーの音楽センスもさることながら、ルイズ・ルイス加部の実践主義(GS~バークレー音楽院)、ジョニー吉長のヴォーカルセンス(GS~イエロー)がトライアングルを形成している。
 デビュー盤は2万枚限定のデビューコンサートのライブだった(日比谷野外音楽堂で1979年7月に無料で行われ、観客動員は14,000人を超えた。この記録は未だに破られていない)。
2枚目の『トライスクル』(1980)は多種多様な音楽が散りばめられ、彼らの底力を知ることが出来る。
特に「ストーリーズ」の時代性、「ソング・イン・マイ・ハート」の3人で演奏しているとは思えないほどの緻密なアレンジ、「バルコニー」「スクーター」に聞かれる音楽の幅、「フィンガー」に代表されるジミヘンを彷彿させるスピード感。
ジョニー・ルイス&チャーの孤高さが漂う作品である。孤高なんだけど自然体。また、それが格好良い。
そう、御託は必要ないのだ。彼らは「格好良い」の一言で済んでしまうアーティストである。文句あっか。

2005年6月29日
花形
[PR]
by yyra87gata | 2012-12-15 06:49 | アルバムレビュー | Comments(0)