音楽雑文集


by yyra87gata

『シンプル・ドリームス』  リンダ・ロンシュタット

 もともとは「ストーン・ポニーズ」というカントリーバンドでヴォーカルを担当していた。ちょっとハナにかかった甘いヴォーカルが、カントリーというアメリカの国民的な歌に合っていただろう。しかし、ニール・ヤングの名盤『ハーベスト』(1972)でコーラス参加し、大ヒット曲となった「孤独の旅路」でのハーモニーは全米に知れ渡ることになる。そして、まだデビュー前のイーグルスをバックバンドに従え、カントリーを超えたポップスを発表する。リンダ・ロンシュタットの天真爛漫な笑顔と華のあるヴォーカルは、ウェストコースト・ブームも追い風になっていた。
リンダは、カバーソングを取り入れることが上手く、他人の歌をリンダ独自の世界に変える力が多分に備わっていた。加えて、プロデューサーのピーター・アッシャーの力も忘れてはいけない。彼女を戦略的に売り込み、ものの見事に「アメリカの歌姫」と言われるまでに仕立て上げていった。
 
 『シンプル・ドリームス』(1977)は彼女の2枚目の全米No1輝き、シングル・チャートでも4曲が40位以内にチャートインしている。三面鏡に向かうナイトドレスのセクシーなアルバムジャケットはジョン・コッシュの作品で、その年のグラミー賞を受賞した。バディ・ホリーやロイ・オービソンらのオールディーズやモータウンなどのカバーをことごとくヒットさせる力量は、カントリーで養ったファルセットとこぶしまわしが基調となっている。
リンダは、カントリーシンガーではあるが、前作まではカントリーをオブラートに包み、新しいファン層を獲得していた。しかし、今作品から再びカントリー色が色濃くなった。これは、ヴォーカリストとしての自信の表れ以外のなにものでもないだろう。
この後、数々の作品を発表し『激愛』(1980)では長い髪をバッサリ切ってパンキッシュないでたちとエルビス・コステロ作の「How do I make you?」をマーク・ゴールデンバーグのサポートで激しく叫んだかと思うと、「Get closer」では7拍子に挑戦してみたり・・・。ネルソン・リドル・オーケストラと組んでスタンダード・ジャズのアルバム『ホワッツ・ニュー』(1983)を発表したり・・・。とにかく70年代から80年代をリンダのヴォーカルは駆けまくった。
 最近では、ラスベガスなどで歌っていると聞くが、昨年、映画「華氏911」のマイケル・ムーア監督を支持する声明をコンサート中に発表し、会場は歓声とブーイングに包まれて騒然となったらしい。リベラルな発言が多いことでも知られるリンダだったが、保守的なファンがビックリしたのだろう。ホテル側はショーを打ち切り、リンダを退去させた。このニュースが報じられるとムーア監督はhpで「憲法が保障する言論の自由を侵した」とホテル側の対応を批判した。ホテル側は「歌手を呼んだのは娯楽のためで、政治的主張をさせるためではない」と反論したが、ニューヨーク・タイムズ紙が社説でリンダの肩を持つなど、いま一つホテル側の分が悪いようだ。
リンダは昔から突拍子も無いことを平然とやってしまうヤンキー娘だ。いくつになっても、そんなリンダは、ただ者ではない、と言う気がする。
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2005年7月14日
花形
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by yyra87gata | 2012-12-15 07:48 | アルバムレビュー | Comments(0)