音楽雑文集


by yyra87gata

『家庭教師』  岡村靖幸

 
d0286848_81411.jpg
2005年7月17日の朝刊を読んでいたら、ショッキングなニュースが載っていた。
「岡村靖幸・覚醒剤取締法違反で逮捕」・・・六本木の路上で挙動不審の岡村ちゃんを警官が職務質問し、事情聴取したところ、覚醒剤反応(陽性)が出たらしい。
言わせてもらうと、岡村ちゃんは昔から挙動不審だったし、いつも目が泳いでいた。でも80年代の日本のポップスを語る上では絶対外せないアーティストだし、いつも時代とかけっこしているそんなストイックな作品を発表していた。和製プリンスと揶揄され、ダンスなどは笑いの対象になっていたが、ひたむきに音楽と向き合っているところは誰も笑うことはできないと思っていた。僕は岡村ちゃんのセンスに惚れていたから、挙動不審だろうがお構いなしに好きだった。
 岡村ちゃんは渡辺美里に曲を数多く書いており、最初は作曲家として売れていたが、80年代中ごろから大沢誉志幸や吉川晃司らとのつながりで表舞台に出てきた。本能の赴くままの詩が猥褻であり、賛否両論を巻き起こすが、本人はそんなことを一切気にせず、「風呂に入るにはパンツを脱ぐだろう」といわんばかりに超現実的な世界を歌う。「女の子に好かれる為に男の子は苦労しているんだよ」「男の子も女の子も頭の中で考えていることは同じ!」といった類の詩が女子高生やOL中心に受けたことも事実である。
 さて、それでは岡村ちゃんはキワモノだったか、というとそれは間違いだ。岡村ちゃんを語る人は全国何万人といると思うが、僕は真面目に「岡村ちゃんは上質なファンクアーティスト」だと信じている。
あらゆる楽器を駆使し、サンプリングを取り入れ、作り出す音は常人では真似できない領域である。何度も言うが、和製プリンスと揶揄するやつ!プリンスが何ぼのものかと思う。プリンスはプリンスとして認めるが、岡村ちゃんとプリンスは本質的に違うの!岡村ちゃんはとにかく女の子と仲良くしたいだけなんだから・・・。そんな世界平和だとか愛で地球は救われるだとか、人種差別反対だとか・・・それはプリンスにお任せするよん。

 さてさて、80年代を突っ走り、1990年に発表した『家庭教師』が今のところの岡村ちゃんの頂点として僕は疑わない。「どうなっちゃんてんだよ」の心の葛藤劇。「カルアミルク」「ペンション」のほろ苦い恋愛劇。「家庭教師」の岡村ワールド。「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」の青春ソング。収録作品全部が岡村ちゃんを体現している。でも、この作品を境に彼は沈黙の時間に入ってしまう。本当にひきこもりになってしまい、ビデオショップとベッドの往復の毎日というのもまんざら嘘ではないようだ。
 しっかあし!1995年ずっと沈黙していた岡村ちゃんは突如として『禁じられた生きがい』を発表し、翌年3回の武道館公演を行った。そのうちの2回の公演を観覧したが、だいぶ太った体を揺らしながらのダンスになっていたが、あくまでも岡村ちゃんだった。でも新曲のプロモーションをするわけでもなく、長い冬眠生活をファンに詫びるわけでもなく、いつのまにか、またまた音楽シーンから姿を消してしまった。その後は思い出したように出てきては、石野卓球とのコラボやベスト盤やBOX企画で名前を見るだけになった。
 新曲をひっさげて、「NEWS 23」に生出演したのは今年だったかなぁ。筑紫哲也が目を白黒させ
ていたっけ。その放送で筑紫は岡村ちゃんを「カリスマ」扱いしていた。
でも当の岡村ちゃんは相変わらず、目が泳いでいた。人の話なんか聞いちゃいないんだから、困った人だ。でも今思うと、そんな彼が覚醒剤やってたなんていったら、・・・そのものじゃねぇか!と憤りを感じてしまった。そこが寂しい。優等生になった岡村ちゃんのファンクは聞きたくないけど、ピュアな岡村ちゃんのファンクがもう一度聞きたいよ。再起を切望する!

2005年7月19日
花形
[PR]
by yyra87gata | 2012-12-15 08:03 | アルバムレビュー | Comments(0)