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音楽雑文集


by yyra87gata

『バンザイ』  ウルフルズ

 
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 彼らの魅力は、切ないくらいの愛情が歌にこもっているということ。トータス松本の世界は「大阪臭さ」や「アホアホパワー」に目が行きがちだが、実はファンキーなリズムとエモーショナルなメロディライン、笑っちゃうエンターテイメントに演歌の深みがあると思えば、わかりやすい。って全然わからん。
 「ガッツだぜ!!」の大ヒットにより一気にメジャーになったが、同時に発表されたアルバム『バンザイ』(1996)は、ウルフルズの魅力を完全網羅している作品である。
とにかくメジャーになりたいという息吹が感じられる作品で、自分達の持てる技を全て出しつくすギリギリのセメントマッチだ。他人の曲だろうが、スタンダードなフレーズだろうが、わかりやすさという面においては、ピカイチである。何のギミックも無い正直さが真っ直ぐに入ってくる。
誤解のないように言うと、往年の歌のアレンジをパクっているわけではない。畏敬の念を持ちながら、彼らのテイストに変えているということだ。
 オーティスを思わせるようなソウルフルなヴォーカルのトータス松本、70年代ハードロックのフレーズが得意なウルフル・ケイスケのギター、朴訥なキャラと思いきやドナルド・ダック・ダンのようなベースを弾くジョン・B・チョッパー、余計なフレーズを極力廃止し、シンプルなグルーヴを出すドラムが得意なサンコン・Jr。
もともとは、アルバイトしていた喫茶店の仲間が集まって出来たバンドだそうだ。音楽の嗜好はそれぞれ違ったらしいが、トータス松本のキャラ(パフォーマンスとは異なり、実は相当デリケートな精神構造の持ち主らしい)と音楽性で3人が集まった(集められた?)らしい。
さて、『バンザイ』は前年にヒットした「ガッツだぜ!」の効果もあり、オリコン初登場2位という記録と80万枚の大ヒットアルバムとなった。
このアルバムからは、トータス松本が格好つけず、赤裸々に男の正直すぎるラブソングを歌う「バンザイ」(TVドラマの主題歌になった)のヒットが生まれ、ただのアホアホパワーだけのバンドではないことを証明した。
 アルバムを聴いていくと、「大阪ストラット」(大滝詠一の「福生ストラット」を替え歌にした)のような関西ネタのお笑いセンスで盛り上げる。そもそもストラットとは“きどって歩く”という意味だが、ここでの歌いぶりは、気取るどころか関西人の特徴を如実に表現した秀作になっている。加山雄三ノリのサーフロック「さんさんさん‘95」、60年代ファンクノリの「トコトンでいこう!」、プレスリーか、お前は!と突っ込みを入れたくなる「てんてこまい my mind」など泣き笑いの歌が塊となって楽しませてくれる。
屈託の無いロックが聞きたいときは、お勧めのアルバム。
 また、アルバムの中からビデオクリップが数曲制作されたが、これが面白い!
ただのライブ映像なんてひとつも無く、メンバーが全員何かを演じている。わざと下手な演技なのか、本当に下手なのかわからないところがミソで、笑いのツボがそこかしこにちりばめられている。歌を全然忠実に映像化していない作品もあれば、泣けるほど切ない作品もある。でも基本にはFUN(楽しさ)があることが、憎めないところなのだろう。(DVDはTSUTAYAにあります。レンタルでもして観てください)

 とどまるところを知らない彼らは、『10周年・5時間ライブ・50曲ぐらい歌いました』(2003)では、CD5枚組でコンサートを丸々収めた作品を発表。5パターンの「ガッツだぜ!!」を演奏してみたり(一時期ジョン・B・チョッパーが脱退していた時期があるので、その間にサポートしていたベースマンがそれぞれの「ガッツだぜ!!」を弾いているアホな企画)、MCをまるまる収めたりしながら、ファンの気持ちを尊重し、痒いところまで手が届く企画を展開している。最近では東映映画『仮面ライダーアギト PROJECT G4』の主題歌を歌ったり、夏のフェスは引っ張りだこ。騒がしく、お祭バンドとして突っ走っている。

2005年8月5日
花形
by yyra87gata | 2012-12-16 08:26 | アルバムレビュー | Comments(0)