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音楽雑文集


by yyra87gata

『アペタイト・フォー・ディストラクション』  ガンズ&ローゼズ

 ガンズ&ローゼズ。とにかく乱暴なバンドである。主催者側はいつも無事にライヴが終了してくれることを望んでいた。いや、その前にライヴ会場にメンバーが揃ってくれることを望んでいたかもしれない。
突然の公演キャンセル、すっぽかし、暴力事件、暴言、宿泊先での破壊行動、熱狂的なファンの公演中の圧死・・・など常にスキャンダラスな話題でバンドは動いていた。 
そしてそのスキャンダラスな話題の中心はいつもヴォーカルのアクセル・ローズだった。
狂気じみた行動と言動は彼の研ぎ澄まされた感性に現実が一致しなかったときに起きる事象だ。これを常人の中では“わがまま”というが、彼のカリスマ性をもって表現するならば、それは“気難しい”に変わり、この事象はプロモーターの悩みの種となっていた。しかし、ガンズの観客動員力は半端でない。プロモーターは黙るしかなかった。

 
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 デビュー盤の『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987)は、発表から1年かけて全米No1に輝く大ヒットとなったアルバムだ。シンプルなビートが出すグルーブはそれまでのハードロックやヘビーメタルといった範疇にはないもので、いろいろなロックやパンクの形態の融合がこのアルバムでは表現されている。
そしてこのアルバムは、イジー・ストラドリンの渾身の作品といっても過言ではない。アクセルやスラッシュばかりが目立つ存在となりバンドを代表する形になっているが、イジーの制作能力(カバー曲の選曲センスやアレンジ能力、静と動を使い分けた作風)がこのアルバムの核となっている。
1曲目の「Welcome To The Jungle」から「It's So Easy」への緊張感ある流れや、ライヴではアンコールで演奏されることが多い「Paradise City」の大陸的な音がこのアルバムのハイライトだろう。他にも「My Michelle」はアクセルが本当に付き合っていたガールフレンドの歌で、「キレイ」とか「可愛い」という類の美辞麗句は無く、ドラッグや無謀な生活を送っている真実の彼女を歌にしたものや「Sweet Child O' Mine」はアクセルには珍しいポジティブなラブソングで、シングルヒットも記録した。
曲も去ることながら、特にアクセル・ローズのパンキッシュなパフォーマンスが話題を呼び、激しい演奏と共にアクセルの限界ギリギリのヴォーカルは自信に満ち溢れていた。
1980年代後半から一気に頂点へ昇りつめ、全米のハードロック(メタル)をリードしてきた彼らのライヴ。客はアクセルの行動にアンテナを張り、挑発を繰り返す。極度な神経質で知られるアクセルは、ある地点以上の緊張が破れた時、キレたパフォーマンスを繰り広げる。観客はそれを期待し、再び彼を挑発する。ライヴは常に戦場だった。
これらのライヴパフォーマンスは『Live Era: '87-'93』(1999)で確認することができる。

 LAのメタル事情として、80年代初期からモトリー・クルーやラット、ドッケン、ストライパー、ポイズンなどのバンドがひしめき合っていたが、80年代末期にガンズがブレイクしたことを最後に音楽地図が大きく変化していった。LAメタルの次にスラッシュメタルの時代が到来したが、それも長くは続かず、オルタナティブ・ミュージックの台頭と共に消滅していった。その分岐点になったバンドがガンズである。
結果的にガンズはそれまでのハードロック(メタル)と現在のハードロック(メタル)の分岐点となり、レッド・チリ・ホットペッパーズやニルバーナ、オアシス、ブラーなど90年代を飾るロックアーティストの指針として存在していった。

度重なる奇行とプロモーターとのトラブルでメンバーは次々とアクセルの元を離れていく。
現在もガンズ&ローゼズは続いているが、全盛期といわれる『APPETITE FOR DESTRUCTION』発表時のメンバーは誰も残っていない。
・・・最近、またアクセルは仕事をすっぽかしたそうだ。

2005年8月20日
花形
by yyra87gata | 2012-12-16 09:03 | アルバムレビュー | Comments(0)