『BACK TO THE LIGHT』ツアー ブライアン・メイ
2012年 12月 16日
QUEENはヴォーカルのフレディー・マーキュリーを失い、方向性が定まらない状態であった。そんな時のブライアンのソロプロジェクトは、フレディへの鎮魂の意味を持っていたのだろう。ブライアンのライヴでは数多くのQUEENのナンバーを聴くことができるという。でも、僕は手放しに喜べなかった。QUEENのナンバーはフレディが歌うことで成立する。あんな“か細い”ヴォーカルのブライアンじゃ幻滅してしまわないか・・・。
確かに、ブライアンは、前年に『BACK TO THE LIGHT』(1992)を発表しており、ワールドツアーを行っていた。その一環で日本公演も予定されていた。
悩みに悩んで僕は、千葉のベイNKホールまで車を飛ばした。当日券売り場にはすでに何人も並んでいたが、容易に購入することができた。
そしてこの後の2時間30分、僕は至上の喜びを感じ、感涙にむせんでしまった。“か細い”ヴォーカルのブライアンは哀愁を誘った。とにかく一生懸命歌っているのだ。『BACK TO THE LIGHT』中心にコンサートは進められ、たまに入るQUEENの曲があらためてフレディがそこにいないことを気づかされる。湿っぽくなりがちなコンサートも安定した演奏によりしっかりと聴くことができた。この時のプロジェクトは素晴らしいのも当然で、バックミュージシャンも素晴らしかったのだ。ドラムはコージー・パウエル(これが最後のライブツアーになったとは・・・合掌)、ベースはニール・マーレイが担当。最強のリズム隊だ。サポート・ギターもイギリスで売れっ子のスタジオミュージシャンだし、女性2人のバックコーラスもセリーヌ・ディオンやロキシー・ミュージックの仕事をしている実力派だ。
ブライアンの作る曲は多彩で、アメリカン・カントリー調の曲もあれば、「LOVE OF MY LIFE」のようなしっとりとした曲も散りばめながら、コンサートは進んでいった。最後は、「WE WILL ROCK YOU」~「BACK TO THE LIGHT」のメドレー。大盛りあがりの中、終演した。
「~光に向かって~新たな旅立ち」という邦題が付けられた『BACK TO THE LIGHT』は、QUEEN崩壊の中、一つの光だった。フレディがいなくなった現実をメンバーは真摯に受け止め、ファンに対し何ができるかを考えていたのだと思う。ブライアンは、自らがフロントラインに立つことにより、QUEEN・DNAを継承し、出来る限りのパフォーマンスを行った。
「フレディ抜きのQUEENナンバーを聴いたって、意味が無い」と少なからず思っていた僕は、ブライアンのパフォーマンスや『BACK TO THE LIGHT』を聴いたことでその考えを撤回した。
『BACK TO THE LIGHT』はよくできたアルバムだと思う。QUEENのために作った曲も収録されており、どうしても引きずってしまうことも否めないが、悲しいくらい真っ正直な作品だ。
その中でも、「Too Much Love Will Kill You」は、このアルバムのコンセプトが明確に出ており、コアとなっている。
「BACK TO THE LIGHT TOUR」は『ライブ・アット・ブリクストン』(1994)で聴くことができるし、ビデオも販売されている。合わせてお勧めしたい。
2005年8月23日
花形