音楽雑文集


by yyra87gata

『ジャスト・ミー』  福島邦子

d0286848_095928.gif 1977年にポプコンで入賞した福島邦子は、同時期のツイストやチャゲ&飛鳥のように時流の波に乗ることはできなかった。
デビュー時はエレキギターを持ち、ロックバンドを従えてライヴ活動を行なっていた。女性でエレキギターを持って歌うアーティストが珍しかった為、それなりに話題になった。時にはサックスを持ち、ピアノも弾き、いろいろと試行錯誤を繰り返していた。東海汽船のCMソング「バイ・バイ・シティ」がスマッシュヒットを記録したが、研ナオコに書いた「ボサノバ」がヒットし、シンガーというより、コンポーザーで名をあげていった。その後チェッカーズ、中森明菜、杏里などにも曲を提供していった。
 フォーライフレコードには約7年在籍し、5枚のアルバムを発表したが、1984年には契約が切れ、作曲と弾き語り中心のライヴ活動になった。
 彼女の作品の魅力は、しっかりしたメロディー作りにある。エレクトーンの講師経験もあり、曲作りの基礎も学んでいた。歌詞とメロディーがしっくりはまる構成が、心地よく響く。字余りの歌や無理やりこじつけた曲調は、福島邦子の歌にはない。シンプルに、そしてクールに、ローラ・ニーロのような雰囲気でピアノの弾き語りをする。
 渋谷ジャンジャンが彼女のホームグランドだった。月1回のマンスリーライブを行なっており、時には3人組の女性コーラスをつけ、アレンジャー兼ミュージシャンの竹田元と組んでライヴを展開していた。
ジャンジャンは舞台と客席が非常に近いライブハウスだったので、見ているほうも緊張感のあるライヴであった。自主制作盤『ジャスト・ミー』(1995)は、そんな弾き語りライヴから生まれた作品を、シンプルな楽器構成で録音したアルバムである。フォーライフ時代のアルバムもどれも秀逸な作品ばかりだったが、いまの福島邦子をあらわすアルバムはこの『ジャスト・ミー』である。20代の女性では歌えない世界、30代40代の女性が共感する世界を、等身大の彼女が描いている。メガヒットを狙う作品で無いかもしれないが、非常に心に残る作品である。

 メディアでは、2005年3月よりNHKBS-2《列島縦断乗り尽くしの旅》のテーマソングとして「空のコトバ」がオンエアされている。日本全国を電車だけで走破する番組は、情報化の進んだ現代に対するアンチテーゼに思える。そこに福島邦子の素朴な歌が重なると単純な旅番組として見ていられなくなってくる。シンプルな8ビートは忘れかけていた何かを思い出させてくれる。
彼女は1954年生まれなので、今年で51歳である。まだまだ現役で歌い続けている。ライブハウスは最近御無沙汰であるが、是非近くで見て欲しいアーティストである。

 彼女は自分のホームページを持っていて、以前そこのBBSに10年以上も前の話を書き込みしたら、何と覚えてくれていて、返信が来たことがあった。律儀な人だと思った。

2005年10月27日
花形
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by yyra87gata | 2012-12-17 00:08 | アルバムレビュー | Comments(0)