音楽雑文集


by yyra87gata

『パラダイス&ランチ』  ライ・クーダー

 
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 アメリカン・ルーツ・ミュージック・・・ヨーロッパ移民の白人の労働歌から発展したブルーグラスやフォーク・ソング(民謡)、黒人の労働歌から発展したブルーズが主となる音楽である。時勢を表す音楽ということも言えるわけで、アメリカ開拓時の音楽もあれば、大不況時代の音楽もある。そんなルーツ・ミュージックにどっぷりと浸かったアーティストがライ・クーダーである。エレクトリックギター、アコースティックギター、バンジョー、マンドリンなどあらゆる弦楽器を駆使してルーツ・ミュージックを表現している。もともとはキャプテン・ビーフハートのギタリストでデビューし、60年代後半はローリング・ストーンズのバッキングミュージシャンとして有名になった。
 60年代~70年代にかけてロックとブルーズは切っても切り離せない関係にあり、伝説のブルーズマン、ロバートジョンソンやマディー・ウォーターズにインスパイアされたストーンズやクラプトン、レッド・ツェッペリンなどはたびたび彼らの作品を取り上げていた。コンサートやレコードでブルーズを表現していたが、所詮白人が黒人の真似をしているに過ぎず、ロックの商業主義に埋もれていってしまった。
ライの取り上げ方は、その音楽を単にカバーをするわけではなかった。まずはその音楽の成り立ちを調べ、現地に赴き、現地のミュージシャンとの交流をもって、アルバムを製作している。時にポール・サイモンのアフリカン・ミュージックに対するアプローチと全く逆といっていい(ポールは、”現代版アフロミュージック奴隷化政策”とまで揶揄されたこともある)。
 70年代からリーダーアルバムを何枚も出しているライだが、商業的に大成功しているわけではない。それは、彼の音楽に対するアプローチが本物志向で徹底的にこだわった作りになっているからだと思う。妥協を許さず、あたかも研究家のような作りにミュージシャンたちは絶賛の拍手を惜しまなかったが、一般人はようわからん、ということになってしまっているのだ。そして日本ではそれが顕著だ。こんなに過小評価されているアーティストは珍しい。うまいけど商業的には失敗、ということ。

 そんな中、日本で唯一ヒットがあった。『BOP TILL YOU DROPS』(1979)はパイオニアのTVCMに採用され、1年間ほどライの音楽がブラウン管から流れていた。「Go home, girl」がヒットした。続けてアルバム未収録の「Big City」もシングルヒットし、ライ・クーダーブーム到来かと思った。しかし、その後発表したアルバムは映画《ロング・ライダーズ》のサントラで、オリジナルアルバムではなかった。ボトルネックを駆使した埃っぽい音は西部劇にピッタリの音楽だったが、サントラでは商業的な成功は無かった。
売れる音楽が良い音楽ということではなく、良い音楽が売れるという世の中になれば、ライ・クーダーは世界中のミュージシャンとアメリカ人から愛されている分、成功するだろう。

 ライのアルバムを聴くと、訪れたことの無いアメリカの片田舎やメキシコ、プエルトリコなどに行った気にさせられる。決して都会ではない。片田舎というキーワードがぴったり当てはまる音だ。
ライの技巧的ギターとスライドテクニックが冴えるアルバムはたくさんあるが、その中でも『PARADISE & LUNCH』(1974)は初期の代表作ではないだろうか。メキシコ音楽に接近した音で、ライの音楽観が広がった作品である。それまでのルーツ・ミュージック探訪の集大成的作品であると同時に、新たな広がりを見せた作品でもある。バック・ミュージシャンも1流どころを使い、思いっきり楽しんでレコーディングされている。
最近ではキューバミュージックへの探求で『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1997)の映像化とアルバムを発表。日本でもブームとなったが、ライ本人のブームではない。あくまでもキューバミュージックの紹介みたいなものだった。
もっと評価されてもいいアーティストの1人である。

2005年11月21日
花形
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by yyra87gata | 2012-12-17 13:11 | アルバムレビュー | Comments(0)