音楽雑文集


by yyra87gata

『スティール・ホィール』  ザ・ローリング・ストーンズ

 
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 現在のメンバーはミック・ジャガー、キース・リチャーズ、チャーリー・ワッツのオリジナルメンバーと3代目のギタリストとしてロン・ウッドがいる。ブライアンは死に、ミック・テイラー、ビル・ワイマンは脱退した。今年もワールドツアーを恒例のシカゴから開始し、まだまだ現役をアピールした60歳代のバンド・・・ザ・ローリング・ストーンズである。
41年もバンドを続けると、もしかしたら親や嫁さんよりも長い時間、バンドメンバーと過ごしている計算になっても不思議ではない。
ストーンズは常に山あり谷ありのバンドで、数十枚のシングルやアルバムは必ず評論家やファンの格好の的となり、常に注目される。そしてワールドツアーの規模やミックの作る詞はもとより、いつ解散するのかまで、話題が絶えることがない。
 ストーンズはメンバーチェンジも数回あり、何度も転機を迎えているが、僕は『スティール・ホイールズ』(1989)は大きな転機になった作品だと確信している。好きか嫌いかと言う問題ではなく、ストーンズにとって重要な作品のひとつであると思う。
もしかしたら日本人が1番多く耳にしたストーンズ作品がこの作品かもしれない。古くは「サティスファクション」や「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」「ギミー・シェルター」「アンジー」などヒット曲はたくさんあるが、一般の茶の間にストーンズが入り込んできた作品として『スティール・ホイールズ』の中の「ロック・アンド・ア・ハード・プレイス」をおいて他にない。これは、ストーンズの初来日で日本中が熱狂し、時を合わせてポカリスウェットのCMで使われたからだ。1990年の2月はストーンズ一色だったといっても過言ではない。

 僕も当然、東京ドームへ足を運び大規模なコンサートを堪能した。バブル全盛のお祭に沸いていた日本は誰もが浮かれ、普段コンサートに足を運ばなさそうなオヤジもミックに声援を送っていた。コンサートは『スティール~』のツアーということもあり、新旧取り混ぜた内容で、非常に見ごたえのあるものだった。前年にミックは単独で来日し、東京ドームでコンサートを開いていたが(東京ドームの“こけらおとし公演”。日本人のこけらおとしは美空ひばりだ!)、ソロコンサートということもあり、ストーンズナンバーを数曲演奏したが、どこか偽物のような気がして、盛り上がりは今一だった。また、ジェフ・ベックがサポートギターで来日するという発表がなされたあと、直ぐにキャンセルになったことも、盛り下がる要因だったかもしれない。僕はドラムがサイモン・フィリップスというだけで大興奮であったが・・・。そんなわけで、ストーンズ初来日は、盛り上がらないわけが無かったのだ。僕はミックとキースが肩を組んでコーラスをしているところを見て、「なんだ、仲いいじゃん」なんて思ったものだった。

 60年代、70年代を突っ走ってきたストーンズはR&Bに根ざした音楽でR&Rをいかに進化させていくかをテーマに名作を発表し続けた。そして80年代に入るとミックはソロアルバムを発表する。ストーンズでは表現できない音を追及するために下した決断だ。『シーズ・ザ・ボス』(1985)はナイル・ロジャースと組んだダンサブルなビートミュージックで、無機質なロックだった。そんなミックの活動をキースは冷やかに受け、辛らつな言葉を投げかけていた。ストーンズの解散説は毎年あがっていたが、今回ばかりは本物と誰もが思った。なぜなら、ミックのソロのあとにキースもソロアルバムを発表し、その内容がストレートすぎるR&Rだったからだ。ストーンズよりもストレートと言っても良いくらいのサウンドはミックに対する呼び戻しのアピールか、それとも決別の叫びか論議を呼んだ。
 ミックはそれでも『プリミティブ・クール』(1987)を発表。AOR的な部分が強調され、商業的な成功は見えなかった。ミックは尻つぼみのまま“もとさや”に戻ったということが大方の見方だ。
そして、突然の『スティール・ホイールズ』の発表と大々的なワールドツアーが僕達を驚かせたのだ。
ちなみに僕はミックのソロアルバムは嫌いじゃない。むしろ、ストーンズのアルバムよりも好きなくらいだ。しっかりとしたテクニックに裏付けられたサウンドにミックのヴォーカルが絡むことで非常に上質なロックを聴くことが出来るからだ。

 『スティール・ホイールズ』の作品はミックとキースの合作曲が60年代の挑戦的だった頃の作風に近く、非常に尖がっている。勢い、音圧もあり、ヘビメタ以上にやかましい曲もある。しかし、ヴォーカルはあくまでもミックのストレートなR&R。一気に聴くことが出来るアルバムだ。
 そういえば、チャーリー・ワッツは今でも3点セットでワールドツアーをこなしている。馬鹿でかいステージにドラムの3点セットは不釣合いだが、出てくる音はR&Rだ。ツーバスやタム回しなんて、きっと姑息な手段と思っているのかもしれない。いつの世もスタイルを変えないチャーリーが一番ストーンズの中で過激な人かもしれない。

2005年11月25日
花形
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by yyra87gata | 2012-12-17 13:12 | アルバムレビュー | Comments(0)