音楽雑文集


by yyra87gata

『熱狂雷舞』  萩原健一

 
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 テレビドラマ《傷だらけの天使》のオープニング・テーマのシーン。井上尭之バンドの軽快なメロディに乗り、寝起きにトマトや牛乳をがっつく萩原健一を覚えているだろう。滅茶苦茶な食事シーンだが、なぜか格好良く見えてしまう。食べるという本能的な行動を赤裸々に表現しており、食べ方やしぐさが野性的で男の僕でも見惚れてしまう。
野性的な魅力という意味でショーケンは開花した。GS時代、テンプターズのショーケンは野性味には程遠く、悪ガキにしか見えない。もちろんフリフリの衣装を着せられていたということもあり、仕方なかったのだろうが、歌の内容も軟弱なものが多く、イライラしているようにテレビには映った。そんなショーケンはまず、俳優として開花した。常にライバル視されていたジュリーは、歌謡曲の世界でトップスターになっていったが、ショーケンは演じる世界を選んだ。主にテレビドラマが活躍の場だったが、狂気を秘めた荒っぽい性格俳優として映画にも進出していった。
そんなショーケンだが、歌は忘れていない。オリジナルアルバムを出し、「酒と泪と男と女」や「大阪で生まれた女」などのヒット曲を持ち、コンサート活動も頻繁に行なっていた。

 僕が高校時代のある日の深夜、ラジオを聴いているとショーケンのライヴアルバムの宣伝をしていた。“ショーケンの武道館ライヴを堂々2枚組に収録!熱狂ライヴ!”みたいなことをナレーターが叫んでいた。いまいちピンと来なかったが、ロックアルバムという漠然としたことだけが残った。とにかく派手派手しいCMだったから。
 高校時代の愛読書“新譜ジャーナル”のアルバムレビューにそのアルバムが掲載されていた。その文字を見て、一目惚れした。『熱狂雷舞』(1978)である。熱狂はわかる。“雷” と“舞”はスゴイ当て字だ。雷が舞うのか、雷のように舞うのかわからないが、とにかくアルバムタイトルに惚れてしまった。タイトルのインスピレーションだけで購入したアルバムは後にも先にもこのアルバムだけじゃないか。
 アルバムジャケットには無精髭が目立つ荒々しいショーケンの横顔。マラカスをもってシャウトしている姿だ。マイクスタンドもYの字型のスタンド(1本の支柱が途中から2本に分かれ、2人分のマイクが使用できる)が使われ、とても珍しく且つ格好良かった。
バックは柳ジョージ&レイニーウッドと速見清司(G)が務めている。これもすごい。レイニーウッドの演奏やコーラスワークは定評があるし、柳ジョージはもとより、速水清は井上尭之バンドのギタリストだ。泥臭いフレーズを弾かせたらピカイチだ。
 そのアルバムでショーケンは紛れも無く、ロックヴォーカリストだった。そこにはマカロニ刑事でも探偵の修ちゃんでも板前のサブでもない萩原健一がいた。僕はテンプターズのショーケンはちっとも格好良く見えなかったが、『熱狂雷舞』のショーケンにはひれ伏した。ショーケンの歌い方は特徴的(最初は酔っぱらいが歌っているかと思った)だが、その何ともいえないスゴミにひれ伏した。触ったら火傷しそうなヴォーカルにひれ伏した。バッキングの正確なアンサンブルがちょっと優等生すぎるきらいはある。ワイルドなショーケンが浮いてしまう箇所もあるかもしれない。しかし、僕はショーケンの雷舞を聴いているのだ。ホーンセクションとロックバンドを従えた雷は、武道館に舞っていた。
 その後のショーケンは自身のバンドを結成し、インド公演や数々のツアーを行なう。最近でも井上尭之やミッキー吉野らとツアーを行なっていた。しかし、そこには以前のギラギラしたショーケンは無かった。妙な歌唱法とパフォーマンスを繰り広げるおっさんがいた。進化していると言うならばそれもいいだろう。しかし、僕は『熱狂雷舞』のショーケンがベストと確信している。あの雷を生で観たかった!

2006年1月7日
花形
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by yyra87gata | 2012-12-18 08:25 | アルバムレビュー | Comments(0)