音楽雑文集


by yyra87gata

『HANDS UP』  THE MODS

 ふと口ずさむ曲がある。
THE MODSの「バラッドをお前に」だ。
この曲は1983年に発表され、ドラマのエンディングソングにも起用されたので、知っている人も多いかもしれない。
 ドラマは《中卒東大一直線 ~もう高校はいらない~》。坂上忍主演、菅原文太、由紀さおりが脇を固めた連続ドラマで、高校の体制に対応できない主人公が高校を中退し、家族の理解の中、大学入学資格検定試験(略して大検)を受けた後、東大理Ⅲに現役合格する、というようなドラマだ。制服の私服化や髪型の規制など当時の学校の規則に対する問題が取り上げられ、金八先生とは違った味の学園ドラマだった。また、実話をもとにしたものだったので、主人公の親が書いた本がベストセラーになり、大検がクローズアップされた。なんせ、この家族、次男と長女も京都大学合格、次女は大検最年少合格という結果だったので、世の中の親達はこぞって読んだのだろう。

 ドラマの中で、やり場の無い主人公の怒りが、エンディングテーマに溶けていた。僕も丁度高校を卒業してブラブラしている時だったので、主人公まで熱くは無かったが体制側に巻かれる反骨精神みたいなものが少しはあり、共感したものだった。ただ、そんな気持ちをこの曲はなだめるでもなく、鼓舞するわけでもなく、ひたすら静かにやり過ごす。そんな突き放し方がまた良かったのかもしれない。
そういえば、同時期に大沢誉志幸の「そして僕は途方にくれる」という作品が同じような気持ちにさせてくれたっけ。
 
 THE MODSはこの歌の前に「激しい雨が」でメジャーの階段を上っていた。この歌は、マクセル・カセットテープの宣伝に起用され、本人達も登場したTVCMでは男のギラギラした躍動感と尖がった音がブラウン管から飛び出してきた。
 森山達也の鋭いヴォーカル、つんざくような苣木のギター、お茶の間で聴いてはいけない匂いがプンプンしていた。
1980年頃、彼らはテクノサウンドに疲れた日本の音楽に雷を落とした。映画《狂い咲きサンダーロード》で使用された「うるさい」は彼らのデビューのきっかけとなった。
そして、ロンドンレコーディングの『FIGHT OR FLIGHT』(1981)でメジャーデビュー。「崩れ落ちる前に」「TWO PUNKS」を収録。今でもこのアルバムから取り上げられるライヴナンバーは多い。

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『HANDS UP』(1983)は「激しい雨が」「バラッドをお前に」「HONEY BEE」を収録し、商業的にも一番成功したアルバムである。ホーンセクションや女性コーラスの起用を良しとしないモッズファンもいたようだが、僕は彼らの音楽の幅の広さを感心しながら聴いた記憶がある。
 
「バラッドをお前に」を口ずさむ。
 “俺はポツンと部屋にいる イラダチが鼻歌をさそう”・・・と歌い出す。
 “お願いだBaby そばにいて笑って その顔を見たくて 俺はボロボロになる”・・・何とも言えない虚脱感が全身を包む。
 そして2番の、“知らぬ間に 手を汚したぜ お前の嫌いな 仕事をしてる”・・・というところがモッズらしい。

 この曲を聴くことだけでも『HANDS UP』は買い!
 
2006年8月19日
花形
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Commented by 飯田昌宏 at 2015-05-04 01:36 x
ご多分に漏れず、中学1年位から音楽にハマる訳ですが、その頃は私の周りで拓郎を聴くなんてヤツは一人もいない訳で、アルバムで言えばフォーエバーヤング辺り、髪型で言えばカーリーヘア、世間的にはフォークというものは古くてダサい事の代名詞でした。

小学校高学年の時に横浜銀蝿がテレビを賑わしてましたが、中学に入った頃、「激しい雨が」が一部の男子の間で流行りました。当時は私もカッコいいと思ったし、刺激的でしたが、それ以上に長渕→拓郎→岡林と掘り下げる作業?に必死でした(笑)。

モッズはその後ジワジワ好きになり、高校生では大ファンになってました。

今でも大ファン。常に追いかけてます。聴いてます。
ライブにも一人で行きます。
森山は何とか病から快復したようで何よりです。

モッズはもっともっと評価されるべき本物のバンドだと常々思ってます。

Commented by yyra87gata at 2015-05-04 22:49
そうですよね。チョット過小評価という気がします。
映画「狂い咲きサンダーロード」で初めて聴いたモッズのとんがり方は未だに忘れないですね。
そして、メジャーになる過程…CMからバラッドにつながっていきます。
雨の野音…懐かしいっす!
Commented by 飯田昌宏 at 2015-05-06 00:09 x
モッズは事務所を独立していて自主レーベルですからね、、。

過小評価かも、と共感してくださり、嬉しいです。
by yyra87gata | 2013-01-08 22:08 | アルバムレビュー | Comments(3)