音楽雑文集


by yyra87gata

ウッドストックとは・・・

 1969年は音楽シーンにとってターニングポイントになった年だ。1960年代に全世界を席巻したザ・ビートルズは煮詰まった状態を打破するために“ゲット・バック・セッション”を行なう。しかしアップル社屋上でのライヴ・パフォーマンスは、彼らが私たちに向けた最後の叫びとなってしまった。
それと引き換えにロックンロール・キングのエルビス・プレスリーは、それまでの映画スターの活動からライブの世界に戻ってきた。エルビスに憧れたイギリスの4人は行き場を無くし、そのエルビスが復活したのだ。そして、ビートルズは『アビーロード』(1969)を発表し、1位のランキングを当たり前のように獲得するのだが、その栄光も新たなる波、キングクリムゾンのデビュー盤により引き摺り下ろされることになる。

 ロックは進化しているのだ。
ロック、フォーク、プログレ、ブルーズ、ラテン、ジャズ、ソウル、ファンク、ポエトリー・リーディング・・・その集合体がビッグ・イベントで開花した。
ウッドストック・フェスティバルである。
45万人がニューヨーク郊外の街、ウッドストックに集結し、3日間の音楽祭を楽しんだ。

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 1969年と言う年は、ポピュラー音楽界のみならず、世相的にも不安定な年であった。ポピュラー音楽界のみに限って話を進めてみると、1月に行われたビートルズの録音セッションは、メンバーの息が全く合わず大失敗に終る。その一部始終を記録した映画「レット・イット・ビー」は、最後のライブ演奏のみがビートルズらしさを打ち出していたとは言え、栄華を誇った「ビートルズ帝国」は、分裂必至であった。そのビートルズに荒らされたアメリカのポピュラー音楽界は、「ビートルズもどき」のバンドや歌手であふれかえり、あと一歩抜けだせない状況であったが、かのエルビス・プレスリーが、映画出演とそのサウンドトラックのために歌うのみだった芸能活動を、ライブに移すことに成功する。エルビスにあこがれたビートルズが没落し、ビートルズに影響を与えたエルビスが復活したのは、真に興味深い事柄だと言わざるを得ない。そのさなかに行われた「ウッドストック・フェスティバル」は、当時のポピュラー音楽の、一大見本市の様相を呈している。映画に登場するアーティストは、それぞれにインパクトがあるが、リッチー・ヘブンス、サンタナ、スライ&ファミリー・ストーンの衝撃度は群を抜いていると思う。
 観客の反応も見ていて面白い。45万(たぶんこの数以上はいるだろう)もの人々が、「ベセルと言う町で、何か面白いことをやっている」と言うだけの理由で、様々な土地からはるばるやって来たのである。ステージに置かれたカメラでとらえられた、人、人、人。「何だこれは」と思わざるを得ない。その人々の間で回し飲みされる酒、タバコ、マリファナ、ドラッグ・・・。不健康極まりないのだが、当時の社会状況、特にベトナム戦争と言う、いつ終るとも知れない戦争へ介入するアメリカと言う国に対する庶民の反応は、「やってらんねえや」と言う部分が大きかっただろうから、そういうものに頼って現実逃避をしたかったのかもしれない。
この一大イベントが開催されて40年が経とうとしている。ポピュラー音楽も様変わりしていて、何かを訴える音楽はヒップホップとラップ、パンクが主流となったが、内容たるや見えない社会に対する不満はわかるが、スケールも小さく、仲間内の愚痴にしか聞こえないのは自分が年をとってしまったためだろうか。もう一度、外へ向かって熱く主張する音楽を聞きたいと願う昨今である。
そもそもこの時代の音楽は、社会と文化が一体のものであり、彼らミュージュシャンが社会に対して示したかった生き様そのものだ。「愛と平和」というのは確かに幻想に過ぎないのかもしれないが、この時ここ(ウッドストック)には確かに「愛と平和」が溢れていただろう。そして、音楽によってあらゆる人々が一つになったのだ。当時のヒッピー文化を知る上ではやはり避けては通れないものである。

 映画<ウッドストック>。3時間以上もある長時間音楽映画(ヒッピー映画?)を最初に観た高校時代、フォークやロックに狂っていたあの時でさえ観賞後は疲れたが、ポピュラー音楽を好んでいる人は、マストな映画だと思う。かの、マーティン・スコセッシも助監督としてフィルムを回しており、これがザ・バンドの<ラスト・ワルツ>に継承されていくのかと思うと、感慨もひとしおである。
<ラスト・ワルツ>はロビー・ロバートソンの名台詞
“It's the end of the beginning of the beginning of the end、・・・”で言い尽くされている。 
この<ウッドストック>の肝は、1970年代の混沌としたアメリカを予測していたかのようにジミ・ヘンドリックスがベトナム戦争を皮肉った"Star Spangled Banner"(星条旗を永遠なれ)をワイルドに演奏したことだ。その演奏は、盛り上がりを見せたパフォーマンスではなく、人々は疲れ果て、人影まばらでゴミが飛び交う中での演奏だったことが暗雲立ち込める70年代につながる。
3日間の盛り上がりはどこに行ったのか・・・。
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 ウッドストックは、世紀の大イベントに変わらないが、生まれるべくして生まれたムーブメントであり、現在の野外ロックコンサートの礎になったことに間違いはない。
この頃のイベントと現在のイベントの違いは、自然発生的に人々がムーブメントを起こすかどうかである。現在は、利権や収益を土台に、主催者側の仕掛けになっているため、意味合いが違った盛り上がりなるのだろう。ライブエイドの金はどこに行ったと思う?・・・言えないよ。
純粋な音楽とその音楽の持つパワーが何かを動かす。そんな熱い時代を知る意味でもこの『ウッドストック』を目撃する価値は十分にある。
 
2007年4月14日
花形
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by yyra87gata | 2012-12-25 11:03 | 音楽コラム | Comments(0)