音楽雑文集


by yyra87gata

Blues・・・アレ!?

 ライヴアルバムを聴いてその臨場感が伝わり、感動することがよくあるが、タネを明かすとほとんどのライヴアルバムは手直しされているのが現実だ。ライヴではギターが1人だったはずなのになぜかライヴアルバムになるとリードギター・パートでバッキングが入っていることも珍しくない。妙なパーカッションやシンセサイザーが追加されることも良くある。だから、本当の演奏力という面では実際に現場に行ってみないとわからないものだ。
 私は以前にも書いたことがあるが、ライヴ会場で個人的に隠し録りを行なうことがある。もちろん自分で楽しむために録音をするのだが、聴きなおしてみるとプロのステージでもバランスが悪かったり、ミスタッチやコーラスが音を外すなんて場面も意外と多いものである。当然この音源を使用してライヴアルバム制作ということになれば、手直しのためにスタジオでその部分の録り直しが行なわれるのである。
演奏力という面で考えると、私が今までに体験したライヴの中で、完璧なパフォーマンスを行なうバンドは、ここ10年くらいの山下達郎のバックミュージシャンたちである。
このバンドは、9人編成の大所帯・・・青山純(Dr)、伊藤広規(B)、佐橋佳幸(G,Vo)、難波弘之(Key)
重実徹(key)、土岐英史(sax)、佐々木久美(Cho)、国分友里恵(Cho)、三谷泰弘(Cho)。
幅広いジャンルに対応できる演奏能力、ソロパートの能力、そして音楽に対するバランス感覚がこれほど醸成されたバンドを私は他に知らない。私はコンサート会場で生録をするのだが、その音源でライヴCDが出来るのではと思わせるほど完成されているのだ。
また、このバックバンドは別名「ネルソン・スーパー・プロジェクト」といい(名前の由来はライヴ会場に足を運ぶとMCで教えてくれる)メンバー間が非常に仲良しで、達郎抜きでライヴ活動やCD『ネルソン・マジック』(2002)の制作まで行なっている。
ライヴでは本人たちのオリジナルと彼らの好きな曲を持ち寄り、普段ヴォーカルをとることの無いミュージシャンが意外なノドを聴かせてくれる。
 
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 昨日、「Blues・・・アレ!?」というバンドを観てきた。このバンドは、前述のミュージシャンたちとMISIAのバックミュージシャンが融合して出来たバンドである。目黒ブルース・アレイ・ジャパンで、年に1度だけのイベントを行なうときのバンドだ(バンド名はこのライヴハウスをもじっている)。
このイベントも今年で4回目を迎えたようだ。当初は自分の好きな曲を持ちよってドンちゃん騒ぎを行なっていたが、最近はヴォーカル&オルガンの佐々木久美が選曲を行い、譜面を起こしてミュージシャンに配っているようだ。ほとんど強制的に譜面が送られているらしく、佐々木久美の道場のようだというコメントもあった。「試練」とか「ハードルが高い楽曲」とかみんな笑いながらしっかりプレイする・・・。
ブルース、ジャズ、ソウルを中心に60年代から80年代の渋い選曲のアレンジ&ソロパートは、芸達者なミュージシャンの腕の見せ所で、ミュージシャンも客も一緒になって盛り上がる。
 鈴木明男のサックスを中心に佐々木久美のハモンドが唸り、ドラムの青山純、ベース種子田健のリズムが地を這う。鈴木健治のハードなギターサウンドに対し森竹忠太郎のジャージーなギターが空間を埋める。このベースメンバーを軸に伊藤広規、難波弘之、重実徹、三谷泰博といった山下達郎バックミュージシャンも加わりあらゆる曲に対応していく。
JBやラスカルズ、スィートソウルの名曲、ブッカー・T&The MG's、憂歌団、ダウンタウンブギウギバンド、果ては左トン平のナンバー(明男ちゃん最高!)までしっかりとした演奏で客を楽しませてくれる。
佐々木久美の味のあるヴォーカルは、達郎のバックでコーラスに徹している時のそれとは大違い。非常に表情豊かな歌声である。
そして、彼らにゆかりのあるヴォーカリストが何人も出演する。
クラウディア、Tiger、三谷泰弘、CHAKA、アスカが普段見せないヴォーカルをリラックスしながら歌い上げる。みんな実力派ヴォーカリストなので、ノドも楽器となり、ミュージシャンと会話しているようにプレイする。アンコールでは佐々木久美、難波弘之、重実徹にピアノの安部潤が加わり、4人のキーボーディストがハモンドとピアノに分れ連弾を始める始末。途中鍵盤から手を離さずソロとバッキングを入れ替える曲芸的な演奏も見られ、大盛り上がりを見せた。ミュージシャンがリラックスしながら普段の仕事とは違った顔を見せるこのイベントは、演奏能力あっての賜物だ。

 ライヴは大騒ぎの中、3時間半にも及んだが、上質な音楽をリラックスした雰囲気でみんなが楽しんでいたので、あっという間の出来事だった。演奏終了後、佐々木久美が挨拶に降りてきてくれた。ハモンドに向かうひたむきな顔が一変し、全部出し切った充実した顔をしていた。
今日のメンバーからのメッセージをまとめるとしたら・・・プロの演奏家は、他流試合ができてナンボ。その上で客をどれだけ楽しませながら自分も楽しめるか・・・ってとこかな。(敬称略)

楽しい夜でありました。
久美さん、ありがとうございました。

2007年6月1日
花形
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by yyra87gata | 2012-12-25 11:10 | コンサートレビュー | Comments(0)