音楽雑文集


by yyra87gata

ブラッキー復刻

 
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 クラプトンの伝説のギター“ブラッキー”。かつてエリック・クラプトンが所有し、愛着をこめて“BLACKIE(ブラッキー) ”と呼んだ黒いストラトキャスター。世界中のファンを魅了し続けてきたギターである。
そもそも“ブラッキー”は、クラプトンがクリームを傷心の身で解散し、アメリカの南部音楽に傾倒したアメリカツアー中に50年代のストラトキャスターを二束三文で数本買ったところから始まる。(1960年代後半、1950年代のストラトの人気は全然無かったらしい)
アメリカ土産として古いストラトキャスターをジョージ・ハリスンやピート・タウンゼントに配り、残った3本の固体から良いパーツだけを集めて作った寄せ集めのギターである。いわゆる専門用語で“フランケン・ギター”である。
“ブラッキー”は、その後のソロアルバム(1970)からデレク&ドミノスの『レイラ』(1970)やドラッグ生活から復帰して発表したアルバム『461オーシャン・ブールバード』(1974)から『ビハインド・ザ・サン』(1984)までの約20年もの間、クラプトンの音楽を支え続けたギターである。
老朽化を理由に1985年のアメリカ・ハートフォード公演を最後に手にすることは無くなったが、そのギターをオークションに出してしまったとき、全世界のエリックファンはびっくりしただろう。
彼が主催するドラック&アルコール診療の専門施設「クロスロード・センター」の運営費捻出のためにギターを何十本もオークションに出したことは記憶に新しい。“ブラッキー”は2004年、クリスティーズのオークションで95万9500ドル(約1億1200万円)という記録的な高値で落札された。
そして一昨年、この「ブラッキー」がフェンダー・カスタム・ショップから復刻生産されたのだ。発売は2006年11月24日のブラックフライデー(復活祭直前の金曜日に、聖職者が黒衣を着ることにちなむ)に設定され、黒ずくめの発売だった。全世界275本限定での復刻生産。実勢価格で300万円だそうだ。
あれから、1年。ようやくその固体が市場に出回るようになった。ひとつひとつ手作りで組上げられ、傷のひとつひとつ、塗装のハゲなどを再現しているので、一気に製作することは困難なギターである。フィギアーと違い、ギターそのものを製作するので、アート的な部分もさることながら、音についても納得のいくサウンドを構築しているはずだ。
 私は、運良くクラプトンが本物の“ブラッキー”を弾く公演を数回観たことがあるので、音の枯れ具合や時よりピーキーになるサウンドが耳の奥底に残っている。また、あの頃のクラプトンはエフェクターもたいして使用しておらず、ほぼミュージックマンかマーシャルへ直にプラグインしていたので、ギター本来の音が出ていたと思う。乾ききった枯れた音だ。
1987年の武道館公演でレースセンサー仕様の“シグネチャーモデルのブラッキー”で来日したときは、ソルダーノのアンプを使い、エフェクターもかなり“かませて”いたので、急にコンテンポラリーな音が響いた。コンプレッサーを何回もかけたような分厚い音になってしまい、枯れた音の代表格だったクラプトンがイメチェンをした瞬間でもあった。フィル・コリンズと付き合ってた頃だからね、仕方ないか・・・。
私はこのレースセンサーのストラトを数度弾いたことがある。感想は、ストラトキャスターと名乗っているが全然別のギターに思えた。ストラトの形をしていてもレスポールみたいな音も出るし・・・、欲張りというかデリカシーが無いというか。私の好きなギターでは無いな、と思った。
“ブラッキー”が枯れたペキペキペキという音だとしたら、“シグネチャーモデルのブラッキー”は、“ブォオー・ブゥオー!”という感じ。

 さて、今回の復刻された“ブラッキー” 。ただのアーティストモデルではない。ひとつの美術工芸品と言っても良いだろう。もちろんレプリカだが、そういった美術品が存在する世界もある。しかも全世界275本とあれば、世界中のクラプトンマニアの争奪戦になっているに違いない。
そして発売から2年経った最近、私はこのギターを観たのだ。ショーケースに飾られていた“ブラッキー”は美術品のようだった。
私は、プレイヤーなのでちっとも欲しくないが、もし楽器屋だったらディスプレイ用に購入してしまうかもしれないな。だって、プレイしようとしても弾く音楽が限られちゃうでしょ。

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2007年11月16日
花形
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by yyra87gata | 2012-12-26 09:14 | 音楽コラム | Comments(0)