音楽雑文集


by yyra87gata

『ベスト・ヒッツ・ライブ~リビング・ルーム・ツアー』 キャロル・キング

 実はキャロル・キングについては、『LOVE MAKES THE WORLD』(2001)発表の時にレビューを書こうと思っていた。なぜなら彼女が59歳の時に発表したこのアルバムは、慈愛に満ちたとても幸せになれる音が溢れていたからだ。名盤『TAPESTRY』(邦題:つづれおり)(1971)の時のような躍動感は抑えられているが、歳を重ねなければ出せない音、声、表現力など・・・自分も歳を重ね日々生活をしている中で非常に共感する部分が多かった。

何も特別なことはいらない・・・お互いを認め、世界に愛を溢れさせる・・・

 18歳から職業作曲家として活動し、世界中の音楽ファンから愛され、私生活でも数々の出会いや別れがあり、それでもミュージシャンとして常に現役でフロントラインにいるキャロル・キングが歌うから意味がある。そのキャロル・キングが2枚組みのライブアルバムを発表したのは2005年のことだった。
居間でくつろぎながら聴くことが出来るコンサート・・・。キングはそのような依頼を数回受けてサロンコンサートを幾度か行なっていた。そして、それはとても好評で、数々の公演依頼を受けることになった。そして、このサロンコンサートをコンサートツアーという形で実現できないか、という企画がもちあがった。2004年のことである。舞台は本当にキングの居間に招待されたかのようにグランドピアノのバックには家具が並べられ、そこで生活をしているかのようだ。そこで招いたお客様相手に和気藹々とキングは歌う。その模様を2枚組みのアルバムとして発表した作品が『ベスト・ヒッツ・ライブ~リビング・ルーム・ツアー~』(2005)である。
d0286848_1012455.jpg

 “私のリビングルームにようこそ・・・何もおもてなしはできないけれど、楽しい音楽を聞かせることはできるわ。でも私も62歳のおばあちゃんだからあまり張りきって歌うことはできないけれどね・・・”と茶目っ気タップリに歌いだす「Welcome To My Living Room」からステージは始まる。
もうこの時点で観客はコンサートという概念を超え、とてもくつろいだ雰囲気に心が満たされる。
そしてそれはCDからも伝わり、無機質なスピーカーから暖かいキングの歌唱や演奏を間近で聴いている気分になる。
バッキングのミュージシャンもでしゃばりすぎず、キングを盛り上げ、絶妙なギターやコーラスを添える。
一人目の夫、ジェリー・ゴフィンとの間に生まれた長女であるルイーズ・ゴフィンとのデュエットも飛び出し、会場は熱気に包まれていく。
キングはヴォーカリストとして絶頂期があるのか(あったのか)どうかは疑問だが、昔と変わらぬヴォーカルを聴かせ、たまに声が枯れる瞬間があるがそれもひとつのライブ感ということで納得できるものだ。
またMCも面白く、会場をいじくることも忘れない。どんどんキングの世界に引き込まれていく。

 アルバムではアンコールを含めて全21曲がクレジットされている(メドレー含)。得てしてエレクトリックギターもドラムもないアコースティックライブは、アレンジが似通うため中だるみが生じるものだが、このアルバムは一気に聴くことが出来る。2枚組というヴォリュームがあっという間だ。その基本路線は、キングは客を楽しませることに全神経を集中させており、演奏に緊張感がある。少ない編成の難しさを克服し、逆に強みにしている。その重要なポイントは、なによりもキングのピアノが絶品なのである。こんなに上手い弾き語りがいるのか・・・しかも62歳!
脱帽である。

 ぜひ、コーヒーでもゆっくり飲みながらリラックスして聴いてほしいアルバムである。
またひとつ私のCD棚にひとつの名盤が加えられた。

2008年5月28日
花形
[PR]
by yyra87gata | 2012-12-26 10:00 | アルバムレビュー | Comments(0)