音楽雑文集


by yyra87gata

Epiphone Texanと輸入車?

 以前から気になっていたギターのひとつにエピフォンのテキサンというモデルがある。
あるアーティストが弾いたことにより、1964年モデルのナチュラル仕様は世界的に有名になった。
・・・私の大好きなポール・マッカートニーがそのギターを爪弾き「イェスタデイ」を歌う映像がしっかり若者のハートを捉え、テキサンは瞬く間にヒットしたのだ。
私は自他共に認めるマーチン派であり、ギブソン社のアコースティックギターには全く興味を抱かないのであるが、ギブソン社の子分的存在のエピフォンブランド、しかもこのテキサンだけは別物である。先ほどのマッカートニーが好きと言うこともあるし、かの石川鷹彦大先生も弾いておられ、それはきっと素晴らしいギターなのであろうと私の少年時代から心に刷り込まれてきているのである。
 テキサンというモデルは、ギブソンJ45やJ50のボディを使用し、そこにギブソンJ45より長いネックを取り付けてあるので、テンションが強く、高音から低音までクリアに出ると言われている。そういったことも何故か私の中で「ギブソンに勝っている」などとわけの分からん論理を妄想のように作り出してしまったのだ。
さて、私がなぜギブソン社のアコースティックギターに興味を抱かないかと言うと、それは造りの粗さの問題と個体差が非常にあるということ。つまり、はずれが多いということ。そして、マホガニーの音自体がいまいち物足りないというところも起因している。
アジャスタブルブリッジが作り出す音は、ジャキジャキという音が好きな方には最高だが、私にはアタック音と高音しか出ないカラカラの音という印象が強い。
まだマーチンのD18は同じマホガニーボディでも胴の厚さと埋め込み式のブリッジなので、低音が出る分許せるが、それでも物足りないのか、私はD18もD19も結局売ってしまい、今ではローズウッドボディのD28を探している始末である(2本目)。
 しかし、手元にマホガニーボディのギターが無くなると、それはそれで寂しいもので、やはり何か1本欲しくなってしまう。そこで以前から気になっていたテキサンというわけである。
1960年代のテキサンはビンテージ価格相場で25万~40万くらい。きっとまた飽きるだろうし、ギターにまとまった金を費やすならマーチンD28に出した方がいいと思ってしまう私に朗報が・・・。ネットで見かけたテキサンの復刻モデル。しかも定価60,000円。ネット値引きで41,800円。しかもシャドウ製のピックアップが内蔵されていてライブをやるにも即戦力じゃないか。これは、一度弾いてみなければ・・・と思い、楽器屋さんに行ってきた。
 ネットで探し、ナチュラルのテキサンが在庫している楽器屋さんに赴いた。事と次第では即決もあるからである。
しかし、41,800円のギターって・・・しかもテキサン・・・そりゃ中国製だわな。ま、しょうがない。それはそれでね。ギブソンもエピフォンもオベーションもスペクターもみんな労働賃金の安い中国や韓国に工場を作って大量生産てなわけだから、そりゃ安い楽器ができてもおかしくはない。あとは品質が維持されているかどうかということだけ。
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 楽器屋さんのドアを開け、中に入ると何と一番最初に目に入ってきたのがナチュラルのテキサン。これは、「縁かな」なんて思い、すぐに店員さんに試奏を依頼。店員さんも快く準備に取り掛かってくれた。
 チューニングをし、ギターを渡してくれるのかな・・・なんて思った時、店員さんの顔が曇り始めた。
「?・・・ちょっとネックが・・・調整しますんで・・・」
「ああ、そうですか。ナチュラルが本当は欲しいんですが、じゃこっちのサンバーストのテキサンで音の確認をしていいですか?」と交渉すると、店員さんはすばやくサンバーストのテキサンを用意してくれた。
私はサンバーストのテキサンを抱き、ネックの握りなどを確認。私の横では店員さんがヘッドのアジャスタブルロッドカバーを外し、レンチでくるくる回しながら右往左往。
私はそれを横目にギターを爪弾く。
 中国製のそれはブリッジが埋め込み式となっており、テキサン特有のアジャスタブルブリッジではないので、幾分か低音が響いた。しかし、①思ったよりもネックが太いこと②昔弾いたテキサンの音とは全然かけ離れていること③よくよく考えてみるとここで4万円を払って隣でロッドをクルクル回したギターを買っても3日で飽きるなと思ってしまったこと。そんなこんなで「うーん」と唸ってしまった。そして挙句の果てには店員さんが、
「すいません。このナチュラルの方なんですけど、ネックの状態が新品でお出しするにはちょっと難しいくらい調子が悪くて・・・うちの系列店でナチュラルの在庫があるところに連絡はできるんですが・・・」。

 私は以前、輸入車メーカーに10年ほど勤めていたことがあり、何度か日本輸入車協会主催の試乗会に出席したことがある。
世界の各メーカーがその年の最新モデルを用意し、マスコミや大手販売店に対し、売込みをかけるという主旨のイベントである。
私は、その会場で普段乗ることが出来ないイタリア車やイギリスの高級車に乗りこみ、楽しく過ごしていたのだが、イタリアのフィアット社のブースで異様な光景を見た。
それはちょうどフィアットクーペの試乗をしようとしたときのことである。
3台のクーペが大きなボンネットを開けているのである。
「試乗をしたい」と申し出ると、担当者が笑いながら「ちょっと無理ですねぇ」と応えるではないか。理由を聞くと電気系トラブルでエンジンがかからないと。しかも、試乗用に持ってきた広報車3台ともである。
担当者はこうも付け加えた。
「イタリアでは車と電気製品は信用してはいけませんよ、って諺があるんですよ」
中国製のテキサンを試奏しながら遠い昔の記憶が蘇った。
こりゃだめだ。

2011年9月3日
花形
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by yyra87gata | 2012-12-27 12:56 | 音楽コラム | Comments(0)