音楽雑文集


by yyra87gata

『告白』  サウンドトラック

d0286848_175823.jpg
 15歳は不安定な年頃だ。身体と心がアンバランスとなり、不自然な行動を引き起こす。最も有名な例が「反抗期」というやつで、この時期になると何でもかんでも面白くなく、何にでも噛み付いてしまう。そして、度が過ぎると犯罪に発展し、万引きや暴力という形になる。但し、ある人に言わせれば、逆に「反抗期」がある分人間として素直なことで、「反抗期」を迎えず大人になるとその分忍耐力も無く、でかい犯罪を起こすケースもあるそうだ。
 湊かなえが2008年に発表した小説「告白」は、そういった不安定な少年を独特の世界観で描いている。少年に潜む虚栄心が担任の娘を殺めてしまうくだりは、読んでいて鳥肌が立つほどである。しかし、そういった事件が起き、犯人探しになったときでも約40名のクラスは無関心や野次馬的な反応を繰り返し、妙に白けている。まさに、現代の縮図ともいえる教室がそこにあるのだ。
奇才中島哲也が2010年に放った映画「告白」はこの世界観を余すことなく映像で表現した。そして、発表から2年も経っているというのに、私はこの映像を忘れることができないでいる。いや、映像というより、映像プラス音楽である。
 サウンドトラック「告白」は、映画を見終わった人間を再び「告白」の世界に連れ戻してくれる。
トム・ヨークのか細いヴォーカルが映像を浮遊する。メインソングとなっているレディオ・ヘッドの「ラスト・フラワーズ」は重い。
全編に流れるBORISのヒステリックなエレクトリック・サイケ・サウンドは、神経を逆なでするかのように響く。そして、そんな中に突然AKB48の作品がぽつんと1曲加わる。その混沌とした世界観。サウンドトラックでこれほど映画を表す作品は稀である。
残虐なシーンで美しいメロディ。
無邪気に見える中学生の映像に凍りつくようなピアノ。
幼児殺害で流れる小さな子供の優しい声。
これらは、ただ単に映画の中で流れていた音楽群ではないことがこのサウンドトラックを聴くと思い知らされる。それは、音楽が音楽として際立たせたこともあるが、これらの音楽は聞き手を別の世界に誘う。
しかも、改めて言おう。この「告白」はミュージカルでもなんでもない。ミステリー作品に属するものだが、私は気持ち悪いほどに心に残り、2年も経ってからサウンドトラックを購入してしまったほどなのだ。
監督の中島哲也は「映画を観ていない人にもCDだけで充分楽しめるようにした。むしろ映画を観ていない人にこそ買って欲しい」と言ったそうだがそれも頷ける。

 聴くタイミングを選ぶ作品だが、私はついつい車の中で聴いてしまう。特に流れるような首都高速。
目の前に展開するスピード感と混沌とした音が妙にオーバーラップしたとき、至福の快楽がそこに現れる。

2012年5月25日
花形
[PR]
by yyra87gata | 2012-12-27 17:58 | アルバムレビュー | Comments(0)