音楽雑文集


by yyra87gata

「Stay with me」の思い出

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 私が大学4年の頃のこと。
今ほど就職状況もきつくなく、企業を選ばなければどこでも潜り込めた1980年代後期。
私は音楽クラブの活動こそ3年生で引退し、個別にチョコチョコとライブやレコーディングに勤しんでおりました。作り貯めた作品を暇そうな友人、先輩、後輩と手当たり次第に声を掛け、譜面を渡してレコーディング!終了したら飲みに行く!という、とても分かりやすい生活をしていた時のことです。
私は学校がとても好きだったので、授業が無くてもぶらぶらと校舎内を歩いたり、江古田の街で昼間から酒を飲んで酔い覚ましに学校の中庭で昼寝をしているような生活を送っておりました。なんせ、授業の単位は3年ですべて取ってしまい、1年掛けて卒論を仕上げる計画を立てた超優等生だったので。・・・要は暇だったということであります。
私がいつものように所属していた音楽クラブの部室やキャンパスの中庭のベンチでギターをボロボロと弾いていると後輩たちが哀れみの表情で「活動すればいいのに・・・」なんて声を掛けてくれるのですが、そんな時私は「ボーッと見えるかもしんないけど、いろいろとこれからのこと考えてんのよ」なんて呂律の回らない口調で応え、失笑をかっていました。
(あれ?なんで4年でクラブ活動しなかったんだろう・・・?? ま、いいか)

 さて、わが音楽クラブの大きなイベントとして秋に開催される文化祭(我々は芸術祭・略して芸祭<ゲイサイ>と呼んでいた)のステージがあります。ま、教室をライブハウスに仕立て、朝から晩までバンドがひっきりなしに演奏するという至極単純なものなのですが、ライブ慣れしていないやつにとってみたら部員以外の方に初めて見ていただくという晴れの舞台というやつなので、みんな躍起になって猛練習をするわけです。私も1年生から3年生まで十分にその雰囲気を楽しみました。そんでもって、そんな後輩君たちを見ながら心の中で羨ましいなぁ、なんて思いながら彼らのリハを見学していました。
そんな時、2年下の後輩君がやってきました。
「一緒に出てもらえませんか。スライド弾いて欲しいんすよ!」
私は断る理由も無いので首を縦に振りながら、それでもちょっと気になることがあったので確認しました。
「引退したOBが現役と一緒に舞台に出たらまずいんじゃない?今までそんなの無いでしょ・・・」
すると後輩君・・・
「なーに言ってるんすか!今までのそんな慣習をぶっ潰してきたのは先輩じゃないっすか!そんなこと気にしてるんすか?いいんですよ、出ちゃえば・・・」
ほほぅ・・・。やっぱり引退すると保守的なるんでしょうか・・・。やっぱり現役君が羨ましい、なんて思ったりして。

 それから、後輩君たちとのリハが始まりました。
彼らのバンドは70年代ロックを演奏するコピーバンドで、パープルやツェッペリンなどの鉄板ネタを得意としておりました。私も歳の割にはかなり古い音楽を聴く方ですが、彼らも中々いろんな引き出しを持っており、よく音楽談議をしたものでした。そして、彼らが私と一緒にやるために選んだミュージシャンこそフェイセズでありました。バンド全員で決めたそうです。
フェイセズ・・・なんと懐かしい響き。
 実は私は高校時代にフェイセズのコピーバンドは何度かやったことがあって、それなりに知っておりましが、その分、フェイセズ独特のグルーヴを出す難しさも経験していたのであります。
ダルなリズムからいきなりタイトになり、スジの通ったヴォーカルが入ると世界が一変する。そして、メンバーが思い思いの演奏をしていてバラバラに聞こえているがいつの間にかそれが太いビートになって圧倒していく。そんなフェイセズのグルーヴはフェイセズ特有のものであって真似をしようにも中々それっぽく聞こえないのであります。
 ヘタウマという言葉があります。ビートルズやストーンズに良く用いられる言葉ですが、かれらは決して下手ではありません。どちらかといえばステージ慣れした上手なバンドであります。彼らは若い頃ハンブルグやロンドンのライブハウスで1日に何度も何度もステージをこなしたバンドですし、そんなバンドが下手なわけがありません。速弾きだぁチョッパーだぁといったテクニック面だけで捉えれば足りない部分もあるかもしれませんが、彼らの強みはそんなことより優れた楽曲とそれに合致したバンドサウンドのグルーヴなのであります。バンドのグルーヴはメンバーが生み出す奇跡であります。そこに集まったミュージシャンどうしが醸し出す奇跡なのです。そしてそれを手に入れたバンドはホンモノなのであります。お助けのセッションミュージシャンでは決して出すことができないものです。
 さて、フェイセズもそんなホンモノのバンドのひとつであります。その楽曲をやるわけですから異様な気合が入りました。後輩君のバンドは高校時代から続いている彼ら独自のグルーヴを持つバンド。そこに私の飛び入り出演。しかもグルーヴ重視のフェイセズ。
私はいろいろなフォーメーションを考えてリハに臨みました。
例えば、喜び勇んでロン・ウッドのギター(彼が実際に使っていた本物だよ。ESP製)を持ちだし、スライドをギュンギュン唸らせてみましたが、どうもいまいちの音。なんか細すぎちゃうのよね。ホンモノのフェイセズだったら合ったかもしれないけど、ドラムの後輩は今までイアン・ペイスやボンゾを叩いていたわけだからケニー・ジョーンズのリズムとは違うのよ。だから自分の音が軽すぎちゃって。
だから、このギターは却下!
でもって、またまた自分の悪い癖が出てきてフェイセズのカバーをするのにフェイセズに成りきってもしょうがないんだから・・・ということで、ギターをギブソンSGに持ち替えてデュアン・オールマンのようにもっと泥臭いプレイに徹したのであります。ははは。これだったらイアン・ペイス、ロジャー・グローバーのリズム隊に負けない。って、フェイセズやるんだよ!何でギターがデュアン・オールマンなんだ!って声が聞こえたけど無視しました。
 
 芸祭当日。彼らの熱い演奏が続き、私はステージ袖でビールなんぞを飲みながらエヘラエヘラと笑っておりました。
 70年代ロックのオンパレードでありまして、ヴォーカルはイアン・ギランになったりロバート・プラントになったり・・・。
でもってアンコールであります。
後輩君に呼ばれて舞台へ。
直接アンプにシールドを刺し、ブーンというノイズがやる気にさせてくれます。
後輩君は笑っていました。ドラムのカウントの後、ハモンドB3が唸りをあげてシャッフルビートの洪水の中で暴れまくります。そしてその激しい渦の中から後輩君のギターがゆっくりとリズムを刻み始め、それに合わせるようにドラムとベースが続きます。さっきまで髪を振り乱してハモンドを弾いていた後輩君も今は陽気なホンキートンクなピアノをプレイしています。私も目で合図しながらスライドバーをゆっくりと弦に当てていきました。
そしてヴォーカルが重なります。
In the mornin' don't say you love me, 'Cause I'll only kick you out of the door

おっ!ヴォーカルの後輩君。ペースを気にして歌い始めたね。リハの時、最初からぶっ飛ばすと痛い目にあってたからね。
さぁ、盛上げていこう!
Stay with me, stay with me For tonight you'd better stay with me!

1番と2番のブリッジにあるキメの3連フレーズ・・・これがまたロニーっぽいフレーズ。でも完コピじゃつまんないからこのバースのエンディングでオールマンの「スティッツボロ・ブルース」のようなフレーズを入れたらメンバーもみんな笑ってましたな。

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 リズムギターに徹してくれた後輩君。本当はリッチーでペイジな人なのに一生懸命ブギーのリズムを刻んでいました。そんで、その上で私は自由にスライドさせてもらいました。
演奏は10分以上も続き、最後は客を無視して自分たちだけで楽しんでたりして・・・。

 ステージ終了後、後輩と握手(あの頃ハイタッチなんてなかったんじゃないか?)。
客席で見ていた同期のOBが「オマエ、ずりぃなぁ」なんて言ってましたっけ。
で、同期のそいつは続けて「Stay with meって後輩がお前に伝えたかったメッセージなんじゃねぇの?」なんて言うもんですから、
「馬鹿言うな!Stay with meはスケコマシの歌なんだぞ!勘違いするな!」と言ったものの、もし彼らの気持ちが少しでもだぶってたらちょっと嬉しいな、なんて思ったものです。

音源があるかどうかは知りませんが、写真は残っています。ヴォーカルもギターも私もみんな笑いながらプレイしています。

今から20年以上も前のことですが・・・。
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2012年8月27日
花形
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Commented by facebook web at 2013-02-02 01:40 x
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Commented by yyra87gata at 2013-02-04 12:55
うーん。いきなり英語じゃわかりませんが、とりあえず何か依頼されるようなことが書かれていますが、私の稚拙な文章なんて、ねえ。
勝手気ままに書いているだけなので、期待しないでください。ありがとうございました。
by yyra87gata | 2012-12-27 18:11 | 音楽コラム | Comments(2)