音楽雑文集


by yyra87gata

クリスマスの約束 小田サンタのプレゼント

 「クリスマスの約束」という小田和正が作る音楽番組をご存知だろうか。今から12年前、2001年12月から始まった音楽番組で当初は小田和正が好きな歌を集め、その歌を歌っているシンガーやミュージシャンに小田自身が直筆の手紙を書き、番組に出てもらおうという企画。しかし、第1回目の放送では、1人もゲストは現れなかった。それでも番組は放送された・・・。主催者がゲストを呼ぶ努力をして、誰ひとりとして来ないという顛末に私は今までの音楽番組に無いリアリティを感じていた。
「スケジュールの都合で出演できない」「若輩者の自分が出るにはおこがましい」「テレビというメディアで音楽活動を1度もしていないし、これからも考えていない」・・・様々な理由が番組内で紹介され、その度に小田が苦笑いをし、「じゃ、僕ひとりで歌います・・・」。
サザンの「勝手にシンドバット」や福山の「桜坂」、そしてこの番組のテーマソング的な存在になる達郎の「クリスマスイブ」など。
福山や達郎からは小田宛に出演辞退の手紙まで来て、それらを紹介していた。それぞれ出演できない理由はあるにせよ、今までに無い音楽番組の形態という感じで私は楽しんで見ていた。
 翌年の2回目もゲストはひとりも来ず、またしても独りで好きな歌を歌う小田。そんな姿を見ている私を含めた視聴者はこの番組に何を求めているのか・・・ちょっと不思議な気分にもなった。ゲストに声がけをして断られ、それでもその音楽を演奏する小田。
 小田の熱狂的なファンであれば、小田がひとりで歌おうがゲストが来ようがなんでもいいかもしれないが、23時台とはいえ地上波のテレビ番組でこの構成はありか?と私は頭をひねったものだ。しかし、それでもそんな構成こそが小田の頑固さが出ているプログラムなのかと思い込んだ。
 3回目以降はゲストもようやく来るようになった。でもそのプログラムは、普通の音楽番組に見えた瞬間でもあった。そしてそれ以降のプログラムは小田自身が週一のレギュラー番組も持ったことにより(風のようにうたが流れていた)、目新しさも無くなってはきていたが、そこは小田のプロデュースするプログラムなので上質な音楽を届けてくれるようになった。例えば2005年や2008年のプログラムでは、小田の全国ツアーにフォーカスし普段見ることのできないライブの舞台裏を見せたり、2006年の斉藤哲夫と歌う「グッドタイム・ミュージック」や2007年のさだまさしと一緒にオリジナルを作る企画など小田でなければできない企画もあった。
そして、2009年の「22'50"」という曲を披露。21組のアーティストの代表曲を22曲をつなぎ22分50秒にもおよぶメドレーを全員で歌いきった。その練習風景からテレビは追い続け、そこにはミュージシャンシップが光り輝いていた。
小田がサンタクロースさながらに私たちに音楽というプレゼントをしてくれる、そんな企画に昇華していった。

 最近の「クリスマスの約束」は少し薄味という気がする。ここ数年はスキマスイッチの2人といきものがかりと根本要(スターダスト・レビュー)、松たかこ、JUJUが小田の周りを固めていて(委員会なんて呼び方をしている)、無味乾燥な印象。派手さが無いというか・・・。また、彼らは小田に対して気を使いすぎというか、まぁ先輩なんだからしょうがないと思うが、小田の一挙手一投足にあそこまでビビったり、ナーバスになったりすると画面を見ている私は妙な気分になる。
あなたたちも同業者なんだから、テレビに出てソロコンサートもできる立派なシンガーなんだろうから、もっと堂々としてればいいのに・・・と思う。そんなアマアマなミュージシャンだから甘い歌ばっかりでガッツのある歌が最近少ないのだと勝手に思う。みんなアホみたいに横にならえで日記みたいな歌を歌っているからね・・・。
 そんな中、昨年の「クリスマスの約束」で唯一光っていたのは小田が歌う「夕陽を追いかけて」だ。
チューリップの1978年発表のシングル盤で、コンサートでも盛り上がる歌である。
年老いた両親、望郷、それでも僕はあの沈む夕陽を追いかけていく。単調なメロディーの繰り返しだが、その音一つ一つに重みが増してくる。まさに男の歌である。
そう、最近の歌はみんな小ぶりで結局何が言いたいのかわからないものが多い。日常を切り取るにしても表現が稚拙で詩的感覚は全くないし、世界観が狭すぎるのだ。
小田の透き通るような声で骨太な「夕陽を追いかけて」は意外性を生むとともに感動を覚えた。もちろん、博多を歌ったこの歌は財津和夫自身の歌であり、横浜生まれの小田が歌うには説得力に欠けるかもしれないが、歌の持つ力が聴くものを引きつけていく。小田が旧友である財津に向けて歌ったということか。

 「クリスマスの約束」という番組。年に1度の小田和正ショーである。
毎回企画を練り上げる苦労は並大抵なことではないだろう。昔ながらの音楽と現在の音楽の融合を図らなければ一般のテレビプログラムとして成立しないだろうし、視聴率も獲得できない。小田の長い音楽人生の中でお茶の間に届けたいプレゼント。音楽という上質な物資を届けるにあたり、試行錯誤を繰り返す。視聴者は年を追うごとにハードルを上げ、その果て無き欲望に応える作り手の苦労はいかばかりかと思う。年に1度だから期待も大きくなる。
 2009年「22'50"」という曲を披露した時、私は全て出し切ったかなと思った。あの曲は小田にしかできない企画だと思ったし、音楽番組としての完成度も素晴らしいものだった。
泉谷しげるが提唱した奥尻普賢岳のチャリティコンサート「日本を救え!」の時、小田は音楽プロデューサーであった。小田は、そのコンサートの最後に出演者全員で「あの素晴らしい愛をもう一度」をシングアウトしている。そのコーラスたるや鳥肌もので、我の強いミュージシャンたちを「音楽」「支援」「愛」というキーワードとコンセプトでまとめあげてしまった。そう、「22'50"」を聞いたときに私は「日本を救え!」の小田を思い出していた。
小田和正の恐ろしいまでの感性とプロデュース能力であの大作を生みだしたのだ。前述のとおり、番組に期待するハードルはかなり高くなっている。二番煎じは禁じ手である。小田サンタがくれるプレゼント・・・。
あとはオフコースの再結成。しかも康さん付き!というのはどうだろうか・・・
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2013年2月20日
花形
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by yyra87gata | 2013-02-20 18:53 | 音楽コラム | Comments(0)