音楽雑文集


by yyra87gata

ジャニスジョプリンズ グレイテスト・ヒッツ ジャニス・ジョプリン

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  27年という短い季節を駆け抜けた天才は伝説となり、女性ロックヴォーカリストのアイコンとなった。
1960年代は、きれいな声で、朗らかに歌う女性ヴォーカルが主だったアメリカンポップス。しっとりと濡れるような絹のヴォーカルのジャズヴォーカル。黒人音楽の世界でコーラスグループやゴスペルなどのレイスミュージックもあれば白人のそれはカントリーソングとなり、明るいヤンキー娘のヴォーカルがフィドルの上で踊っていた。しかし、ジャニス・ジョプリンのそれはどこにも属さない魂の叫びだ。果たしてジャニスの前に女性ロックヴォーカリストと呼べるシンガーがいただろうか・・・。もしかしたら、ロックミュージックという男社会の中で気を吐いていたのはグレイス・スリックくらいだっただろう。しかしそれは、ジェファーソン・エアプレーンの一員として、どちらかといえばセックスシンボル的な役割を担っていたかもしれない。
  ヴォーカルというシンプルな表現方法。その一点のみに集中し、パフォーマンスを行なう。観客を唸らせたジャニスはその時、天にも昇る思いだったろう。学生時代に自分を蔑んだクラスメイトに対し、唯一信じられる歌で・・・。そしてそれは、そんな低次元の話から始まったが、最後は世界に向けたメッセージとしてありのままの自分を曝け出していくことになる。
  ジャニスはサンフランシスコでビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニーの一員となり、音楽活動を始める。モンタレー・ポップ・フェスティバルで注目を浴び、バンドを変え、メインストリートを走り始め、ウッドストックでのパフォーマンスは全世界の注目の的となった。

  注目され続ける人は孤独が慰めとなる。そして、その時、人は自然の一部だと再認識する。
人生を支えてくれるもの。栄光?金?野心?愛する人?
人情の機微に触れた時、それをやすらぎと取ることができるか。
舞台で観客と向き合っていたあなたは、いつが至福の時間だったのだろうか。
その時間を求め、彷徨い、行き着いた先が悪魔の水であれば、それはあまりにも哀し過ぎる。
カリスマと呼ばれ、人生を生き急いだ先に見た桃源郷はあまりにもつらく、厳しい空間だったろう。

“いつかお前は成長し旅立っていく”と子守唄を歌う。切々と歌われた「サマータイム」での名唱は語り継がれる。
“いつかメルセデスに乗る夢”を歌っていた時の表情は希望に満ちていただろう。
それはけっして欲望ではなかったはずだ。

  ジャニスが残した数々の名唱。アルバムはどれも宝物が収まる魔法の皿。
ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニー名義の『チープスリル』(1968)も、レコーディング中に倒れ未完に終わる『パール』(1971)もすべて彼女の言霊が入った魔法の皿だ。
そんな歌たちが網羅されている『ジャニス・ジョプリンズ・グレイテスト・ヒッツ』(1973)はコンパクトにまとめられた良作である。
ハーレーにまたがり、笑顔を見せるジャニス。
屈託の無い笑顔が哀しい。


2015/12/22
花形
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by yyra87gata | 2015-12-22 08:28 | アルバムレビュー | Comments(0)