音楽雑文集


by yyra87gata

ラリー・カールトンから学ぶ

 
d0286848_1965141.jpg

 
 我が家に本格的にビデオデッキが投入されたのは1985年の4月でした。本格的にと言う言葉を使ったのは以前1度だけモニターでSONYベータマックスが2週間ばかり置かれたことがあり、お袋が「こんな高いもの買えない」といって返却してしまった(この話は 「キャンディーズが我が家にやってきた」 http://hanatti.exblog.jp/17460755/ に詳しい)からです。
さて、価格もこなれ、ビデオデッキが一般家庭に普及すると同時に、ちまたではレンタルビデオ店が流行り始めました。
 私は大学に入学し、慣れないエレキギターなるものを任された時でありましたので、とにかくギタリストのビデオでも見て勉強しようとせっせとレンタルビデオ店に通い始めたのであります。
そして、やっぱりみんなが影響を受けたというエリック・クラプトンの弾き方が一番しっくりくるんだろうな、などと思いながら何本か確認する毎日でありました。
ある日いつものようにビデオを借りてきて調子よくデッキに放り込みました。
それは、レイドバックしたサウンドを勉強でもしようかと思い「エリック・クラプトン1977 On whistle Test」という音楽番組での生ライブを収録したもの。
目を凝らして観ていたその瞬間、画面からは聞いたことも無いような流れるフレーズと滑らかなトーンが溢れてきます。
ふむふむ、ブルースに魂を捧げ、ドラッグに溺れながらも復活を遂げた男の行き着く先にはこのような穏やかな世界がひろがっているのかと思いつつ画面に見入っていました。
カメラはその男の背後から狙います。
うん?セミアコ弾いている。意外だね、この頃だったらクラプトンはブラッキーかブラウニーというストラトキャスターを使用していたと思っていたから・・・ね。
カメラが回りこんだその瞬間「?」マークが私の頭に飛び散りました。
「誰だ、これ?」
クラプトンと信じて観ていた映像が別人になっているのです。
慌てて、デッキからビデオテープを取り出しました。
背表紙に「Carlton Live」とあります。
これ、ビデオ屋がクラプトンとカールトンのスペルを読み間違えて貸し出し用のケースに収めたんだ、と認識。確かにClaptonとCarlton、似ていると言えば似ています。
やられた!と思いましたが、まぁラリー・カールトンのレコードも持っていたし、いっちょ観てみるかとビデオを再生しました。
まぁ、それはそれは難しいフレーズをいとも簡単に弾いていらっしゃってエレキギター初心者の私にしてみたら異次元のプレイヤーであります。
ロックギタリストのように音を歪ませ両手を使ってせっせと16分音符や32分音符の応酬というわけでもなく、時にメロディアスに時にエモーショナルなプレイをギブソンES-335から奏でているのであります。
弾けはしないけど心地良い。そんなフレーズの応酬です。

 ラリー・カールトンはクルセイダーズやフォープレイ、ジョニ・ミッチェルやスティーリー・ダンなどのセッションプレイヤーとして有名ですが、私が中学の頃はアルバム『Larry Carlton』邦題「夜の彷徨」(1977)が大ヒットしており、私もアルバムは購入しておりました。
私はその頃エレクトーンを習っておりましたので、アルバムの中の超有名曲「Room335」を課題曲に取り入れ、練習しておりましたのです。
 あの頃の彼のサウンドはジャズとポップが融合し始めたクロスオーバーというジャンルに差し掛かっており、コテコテのジャズギタリストという印象よりもイージーリスニングに近い感じでした。また同時期にリー・リトナーも『The Captain's Journey』(1978)を発表。このアルバムも大ヒットしました。
そうです、あの頃はラリー・カールトンとリー・リトナーが一大ブームになっていたのです。
リー・リトナーのアルバムの方はラテンっぽいカッティングやフレーズが多く、エレクトーンには合わせ辛いと思いあまり聴かなかったのですが、ラリー・カールトンは本人のリーダーアルバム以外にも様々なミュージシャンとのセッションが多かったので耳に残っていました。
しかし、クラプトンと思って聴いていたらいきなりカールトンが出てきた時はびっくりしました。思い込んで聴いていればいるほどそのギャップに驚かされます。

 私が良く行くリハーサルスタジオのロビーにはライブ映像を流すモニターがあります。
そこではロックからフュージョン、ジャズに至るまで様々な音楽が映し出されています。
 ある日のモニター。
随分上手に「Room335」を弾く細身の男が映し出されました。頭はスキンヘッドで遠くから見るとマッチ棒がギターを弾いているみたい。でも、流れ出る音は伸びやかなサウンドです。
一人前にヴィンテージのギブソンES-335を弾いているじゃないですか。
最近の素人は凄いね、なんて思っていたら・・・本人でした!
いつからあんなに禿げ上がったんだろう。
私の知っているカールトンはサーファーのようなレイヤードのロングヘアーだったのに!
またしても予期せぬ出会いにびっくりした次第です。カールトンよりもリー・リトナーの方が先に禿げ上がると思っていただけにびっくりデス。
思いこんで観たり聴いたりしていると、その裏切られ方が半端でないという例をカールトンから学びました。
d0286848_1974845.jpg


2017/3/14
花形
[PR]
by yyra87gata | 2017-03-14 19:08 | 音楽コラム | Comments(0)