音楽雑文集


by yyra87gata

星影のバラード  レオ・セイヤー

d0286848_16093991.jpg





“カセットテープに好きな曲を録音し、好きなあの娘に送る” なんてことをみんなやってたでしょ。


好きなミュージシャンやシンガーのベストセレクションとか、ラブソングだけを編集して送るとか。中にはオリジナルの曲を弾き語りしたものを録音して送る、なんてしたことある人!今すぐ白状しなさい!ある・・・でしょ?


今、そんなものを再生されたら、舌かんで死にたくなる・・・女房に知られる前に処分しなきゃ!と思った人、いるでしょ!


いいじゃありませんか。青春の思い出、若気の至り、暴走する青い性・・・ちょっと違うか・・・ま、ほろ苦い思い出の人もいるでしょうね。


で、相談を受けたわけです。

高校2年の文化祭だったか…。


アタシは中学、高校と6年間一貫教育の男子高に通っておりまして(聞くだけで汗臭そうでしょ)、女子との接点なんてまずありえないんですよ!男子高の門は、硬く固く堅く閉ざされているのです。

でも、年に1回の文化祭の時だけその門は開かれ、女子が校舎内を闊歩することができるわけです。で、そんな中、狼のような男たちは女子がキョロキョロしながら廊下の奥から歩いて来るのが見えると、狙いをつけたり、焦ったり、緊張したりするわけです。まったく俯瞰から見たら青臭い空間であります。


そんな夢のような文化祭の終わりには必ずフォークダンス大会(古っりぃ~)があって、女子と合法的に手を握るチャンスが来るわけです。チャンスは平等だお。


ここで、学校の外に彼女がいるやつは(当たり前だよ、学校内に彼女がいたらゲイだ!)、けっこう余裕をかましながら他校の女子高生と踊るわけですが、彼女いない歴16年の男子はガチガチに緊張しながら手汗かきまくりで踊るわけです。青いというか、情けない。


アタシは外に彼女がいたのですが、丁度この文化祭の前に振られてしまっていて、ヤサグレていた時期でありました。だから、楽しそうにダンスをしている友達を横目に野次を飛ばすことしか出来ませんでした。哀しいのぉ。


さて、文化祭も終わり、ダンスの興奮も冷めやらぬ男と女は、お互いに連絡先を交換します。そして男は次の段階に移ります。そうです、校外でのデートなわけです。


「どうやったら彼女にすることができるか」から始まり、「どうやったらキスまでもっていけるか」となり、「どうやったら・・・」となるわけです。


で、当時の青年誌、我々のバイブルであった「GORO」や「スコラ」などの“そういった特集記事”を回し読みするわけです。

最初のデートではマックなんて行っちゃだめ!から始まり、彼女をスマートにエスコートするには…なんて項目がいっぱい書いてある訳です。はい。


彼女を押し倒したとき、彼女の身体に全体重を乗せないように腕立て伏せだけはやって、腕の筋力だけは鍛えておきましょう、なんてアドバイスを真面目に信じていたやつもいましたかんね!


中にはデートの台本まで書く兵(つわもの)もいて、アタシはその友達とロープレした事がありますよ。もちろん、アタシは女役でしたが。


で、そんなことばっかり考えている高校生なわけですが、彼女への一番のアプローチグッズはカセットテープなわけです。


 


 “この前の文化祭で一緒に踊った娘で彼女にしたい娘がいるんだけど、カセットテープに雰囲気の良い音楽を入れるには何の曲がいいんだろうか” という相談が来ました。


 お前さぁ・・・自分の顔を見てから相談に来いよ、と思いながらも真面目な顔でアタシは応えます。


 “お前が好きな歌手やバンドの歌でいいんじゃないの?自分が良く知っている歌手の方が無理しなくて良いと思うけど” と的確なアドバイスをしたつもりなのですが、


それじゃ、駄目なんだ!と。俺は中島みゆきとさだまさししか聞いてない!とぬかしやがったわけです。


 笑いをこらえながら、“それでも、みゆきやさだまさしの歌の中にも明るい恋愛の歌はあるだろう”と伝えると、その娘は洋楽志向なんだ!というのであります。


好きな音楽は、エアサプライであったり、ホール&オーツだったり・・・。


そりゃ、全然違うわな・・・(溜息)。


で、何曲か候補を出したわけです。彼女はきっと「ベストヒット・U・S・A」を好んで見ていると仮定し、最新のヒットチャートより古めの歌を選曲しました。


例えばビートルズだったら「If I Fell」とか鉄板でしょ?でもそいつ、壊滅的に英語が出来なくて、今のお前の気持ちをストレートに表しているのはビートルズだったら「Please Please Me」かな、って教えてやったら“どうぞ、どうぞ私に”ってどういう意味だ?って不思議そうな顔をするわけ。


アタシは眩暈がしましたよ。


「僕が君に尽くすように、君も僕を喜ばせてくれよ!」という意味だよ、って教えると“「どうぞどうぞ」”じゃないのか・・・だって。

で、そんなこんなで46分テープに数曲を収録し、彼の想いは完成したわけです。


そのテープの中で私が一番好きだった歌がレオ・セイヤーの「星影のバラード(More Than I Can Say)」なんよね。


もともとはバディ・ホリーのバックバンドのクリケッツのメンバーだったソニー・カーティスとジェリー・アリソンの歌で、レオ・セイヤーが1980年にカバーしてヒットさせたんだよ。でも、時期的にジョン・レノンが長い休養から復活して、そん時に出した「スターティング・オーバー」が1位をずっと独走していたから、結果的に2位どまりになってしまった不運な歌なんだけどね。


でもこの歌、1970年代のテクノサウンドにも飽きて、落ち着きを求める人に支持された名曲であります。ゆったりとした時間の中で気持ちの良い8ビートなわけです。


Woh, woh, yeah, yeah
I love you more than I can say
I love you twice as much tomorrow, woh
Love you more than I can say

Woh, woh, yeah, yeah
I miss you every single day
Why must my heart be full of sorrow, oh
I love you more than I can say

Ah don't you know I need you so
So tell me please I gotta know
Do you mean to make me cry
Am I just another guy

Woh, woh, yeah, yeah
I love you more than I can say
Why must my life be filled with sorrow, woh, woh
Love you more than I can say

Ah don't you know I need you so
So tell me please I gotta know
Do you mean to make me cry
Am I just another guy

Woh, woh, yeah, yeah
I love you more than I can say
I love you twice as much tomorrow, woh
Love you more than I can say
I love you more than I can say
I love you more than I can say, oh...



情熱的で、狂おしいまでのラブソングです。



“くる日もくる日も君が恋しい なぜこんなに悲しい思いをしなくちゃいけないのか

言葉ではいえないほど愛してるよ〝


こんな歌詞日本語で歌ったら演歌ですがな。フォークソングで言ったら中島みゆきも真っ青な世なんだけど、英語でさらりと歌ってしまうと、これがスマートなわけです。

レオ・セイヤーのハスキーだけど高音が伸びる独特な声にマッチしていますな。名曲であります。

さて、カセットテープを携えて、彼女のもとに向かった友達ですが、なんだかんだ言いながら2~3回デートしたんじゃないかな。
付き合っている時も授業なんて上の空で、次のテープを作ってく
れ!なんてオーダーが来ていましたから・・・。

友達はアタシに非常に感謝していたが、アタシではなくレオ・セイヤーに感謝すべきだよ。なぁ!


d0286848_16121656.jpg

2017年5月15日

花形



[PR]
by yyra87gata | 2017-05-15 16:27 | 音楽コラム | Comments(0)