音楽雑文集


by yyra87gata

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 80年代はキーボードが一番発達し、音楽が変わった時代である。
シンセサイザーの発展が一番の理由だが、そもそもデジタルという「連続性で無く単一のデータを組み合わせた」概念が芸術を変えてしまった。
それは、テクノサウンドというわけではない。すべての音楽がデジタル化し、作品の定義が変わってしまったのだ。
 「打ち込み」や「サンプリング」、「シーケンサー」などといった語句が生まれ、音楽の作り方をも変わり、今まででは再現できないような音の構成が簡単にアウトプットされるようになった。
ドラマーは廃業に追い込まれ、生ギターは前時代の化石と言われ、楽譜も読めない素人がパソコンソフトで音楽を作り出す時代に変化していったのだ。これに異を唱えるかどうかはここでは避けるが、そんな1980年代半ばに前時代的なテイストで、且つ、新鮮な風が吹いた。
 ブライアン・アダムスの登場である。もちろんブライアンは1980年代初頭から活躍はしていたが、全世界的に名を馳せたのは自身の誕生日である11月5日に発表された名盤『Reckless』(1984)である。このアルバムは、全米アルバム・チャート1位を獲得し全世界で1200万枚以上の売り上げを記録した。
 前述のとおり、無味乾燥なお気楽な80年ポップスの中でいきなりアナログチックなこの作品。はっきりいって異質であった。それは、間違えて女子専用車両に飛び乗ったと同じくらい違和感がある(経験者は語る、まぁそれはさておき・・・)。
その異質な状況・・・ブライアンの若さゆえ、まっすぐな歌がギミックとフェイクに溢れたお気楽なシンセサウンドに喝を入れた形となったのではないか。
正直、私もレコードに針を落とした瞬間、ストーンズやスプリングスティーンのような重厚感あるドラムの音で背筋を伸ばしたものだ。
おっ、やる気にさせるね。誰かね・・・ミックスは・・・レコーディング・エンジニア・共同プロデューサーのボブ・クリアマウンテン、マスタリング・エンジニアのボブ・ラディック・・・なるほどね。やっぱりの音だわ・・・。ただ単に古臭くなく、80年代の音でしっかりロックしている音。
パワーステーション系の音が80年代ロックのアイコンであることも付け加えておこう。
 
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 アルバムに針を落とす。
1曲目に相応しい・・・スタートダッシュの表現がぴったり合う「One Night Love Affair」、3曲目の「Run To You」から「Heaven」に続く最初の盛り上がり。高揚する展開。
裏面に進めば「Summer Of '69」で郷愁のロックンロール、B面3曲目の「It's Only Love」でのティナ・ターナーとのゴージャスなデュエット。そしてラストの「Ain't Gonna Cry」まで突っ走っていく。
これ、CDで聴くのとレコードで聴くので比べたら断然レコードの方がドラマチックな展開なわけ。つまり、盤面をひっくり返すところも音楽の一部と言うくらい、間(ま)が合う。

 時は1985年夏。ブライアンがノリノリで全米ツアーを行ない、そのままの勢いでLIVE AIDに参加。「Kids Wanna Rock」と「Summer Of '69」が世界に生中継された。
大御所たちが出演する中、若さあふれる、さわやかなロックンロールを灼熱のJFKスタジアムに奏でていた。
そしてその年の秋には来日公演を果たす。大盛り上がりで武道館が揺れたという伝説もあるらしい(私は1991年、全日本プロレスでジャンボ鶴田が三冠ヘビー級戦を当時最も勢いのあった三沢相手に防衛した時、武道館が揺れた体験をしているが・・・関係ないか!)。

 話がとっちらかってきたが、ブライアン・アダムスの『Reckless』は、80年代の中でも飛びっきりなロックンロールアルバムで、この先、いつの時代でも聞き手を若々しくさせる作品となるだろう。
ちなみにReckless・・・訳すと「むこうみずな、無謀な・・・、意に介さず」。
これじゃあんまりなので、「青春の暴走」とでも訳そうか。

2014年10月21日
花形
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by yyra87gata | 2014-10-21 17:05 | アルバムレビュー | Comments(2)

ディアハンター

 映画「ディアハンター」(1978)を約35年ぶりに観る。
最近の友人の何気ない一言。
「ディアハンター」で、あいつ最期どうやって死んだんだっけ?自殺?という質問の意味。
その質問、実は私が高校時代に観た時もわからなかったのだ。だから、友人と最近話した会話の中でも曖昧となってしまった。
だから、もう一度観る。

 その質問に出てくる、「あいつ」とはクリストファー・ウォーケン演じるニックという青年。デ・ニーロ演じるマイケルとは反対の性格で理知的。メリル・ストリープ(リンダ)と結婚し、出征した。
ベトナムでの過酷な生活を乗り越え(?)、自陣に命からがら戻ったが、精神的に病み、実は乗り越えることはできていなかったのだ。
だから、マイケルは、退役軍人として故郷に帰ったが、ニックはベトナムに残り、捕虜中に精神負荷をかけられたはずのロシアンルーレットの賭け事に身を投じてしまったのだ。もうすでにその時点で彼は死んでいたと言ってもいいだろう。自殺でも他殺でもない。
しかし、このシーンのすごいところは、ニックは賭けで勝った金を故郷の女リンダに送っていたと言う唯一残された愛と言う感情があったと言う事。そして、マイケルがニックを連れ返そうと再びベトナムに戻ること…これは、愛より友情が勝ったという事。つまり、マイケルはニックの妻であるリンダに好意を寄せ、実際に帰還してから関係をもってしまうわけだが、それよりもニックの帰還を願い、ベトナムに戻る。
 このシーンを活かすため、作品の冒頭部分の長い1時間に彼らの人間群像を描いていたのだ。ともすれば、この部分はだらけてしまい、中々物語が前に進まない部分なのだが、この作品の中で非常に重要な部分であり、理知的なニック、猪突猛進型のマイケルの性格や行動をパーティーや鹿狩りを通じて描き、何の変哲もないピッツバーグの鉄鋼工場に勤める平凡な若者たちの生活を表現していたのだ。しかも過酷な労働の中にもそれぞれの青春があったのだ。しかし、戦争はすべてを変えてしまう。
命を落とさなかったとしても、精神が死んでしまう者もあるということ。
マイケルはベトナムから帰って来て、鹿狩りに再び行ったが、引き鉄を引けなくなっていた。
 そして、ニックは・・・。
せっかく捕虜の身分から助かった命をギャンブルという資本主義の社会悪で失うのだ。前述の鉄鋼工場。この時代のピッツバーグには多くのロシア系移民が労働従事していた。ニックもサイゴンの病院でロシア名を確認されるシーンがある。そのニックがロシアンルーレットで命を落とす…。無情である。
私はこの作品は、1970年代を代表する青春映画として推す。決して戦争映画ではない。

 
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 最後に音楽。
テーマ音楽はスタンリー・マイヤーズ作曲の「カヴァティーナ」で、ギターはジョン・ウィリアムズによるもの。
映画の過酷さとは反対で、静寂な中にも癒される楽曲である。当時のアメリカ映画の音楽はこのような傾向が強く、「タクシードライバー」「明日に向かって撃て」「俺たちに明日は無い」「ラストワルツ」など、作品内容とは逆の雰囲気を醸し出す音楽テーマソングがあり、それがより一層感情の振れ幅を増幅してくれる。
副テーマソングとして、フランキー・ヴァリが歌う「君の瞳に恋してる」。
私は1982年にボーイズ・タウン・ギャングがカバーヒットさせた時、非常に違和感を覚え、素直にラブソングとして受け止められなかった記憶がある。
そんな厚顔無恥に歌われてもなぁ、なんて思ったもので、歌に罪は無いが、これも全てベトナム戦争が悪いということにしておこう。

2014年10月13日
花形☀️
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by yyra87gata | 2014-10-13 10:35 | その他 | Comments(0)