音楽雑文集


by yyra87gata

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ファイティング80's

1980年を境に前後3年間。
日本の軽音楽が一般に認知されていった頃のこと。
それは、テレビというメディアに歌謡曲以外の音楽が殴り込んでいった時期で、テレビCMソングに至っては、こぞってロックやニューミュージックと呼ばれたジャンルのミュージシャンを採用していた。
70年代後半はキャンディーズが引退しテクノが流行、山口百恵がマイクをそっと置いたのはちょうど1980年。聖子や明菜、キョンキョンなどといった歌謡曲の新しい波が80年過ぎにデビューしたが、そこには70年代の職業作家は影を潜め、ユーミンやはっぴいえんどの4人が作家やミュージシャンとなりヒットチャートを席巻していた。新しいタイプの歌謡曲が新しいタイプのアイドルを生んだのだ。
70年代のアイドルをパロディのようにキョンキョンは「なんて言ったってアイドル!」と叫んだことが新しい時代の象徴だった。
さて、そんな音楽の流れが変わり始めた頃、東京キー局では「ザ・ベストテン」「紅白歌のベストテン」「夜のヒットスタジオ」「ミュージックフェア」などの音楽番組が全国に発信していたのに対し、関東地方局からは非常に尖ったプログラムが毎週放送されていた。

 高校時代、よく足を運んだ場所に蒲田の電子工学院ホールがある。
テレビ神奈川制作の「ファイティング80’s」の公開録画を観るためだ。
時は1980年〜1982年の3年間。
当時「ファイティング80’s」に出演していたミュージシャンは、日ごろライブハウスなどで日の光を目指し、チャンスを掴もうとしている者ばかりであった。もちろんロック界フォーク界でのベテラン組も出演していたが、時代的にまだ彼らの音楽は東京キー局からの発信が皆無に近かった。所詮主流の音楽ではなかったと言うことだ。

番組の司会は、宇崎竜童。気さくに接するその振る舞いに、出演するミュージシャンの良い兄貴分に見えた。番組の前座は決まって新人の佐野元春の「アンジェリーナ」。スプリングスティーンみたいな雰囲気で、早口のロックを歌っていた。

「ファイティング80’s」の前身番組で宇崎の言うことをいつもボンヤリ聞いて、小さな声で毒づいていた清志郎。だけど、放送開始1年後には「雨上がりの夜空に」で大ブレイクして公開録画の競争率が上がったこと。シーナ&ロケットやザ・モッズ、ザ・ロッカーズといった「めんたいロック」を知ったのもこの番組だった。
印象に残る出演者は、デビュー当時のサザンオールスターズ…大学生が内輪受けのバンドをやってますといった感じで桑田はいやらしい腰つきで歌っていた。
岡林信康が出たときはびっくりした。ロックバンドを率い、「Good Bye my darling」って歌っていたが、はっぴいえんどをバックに歌っていたときと違って、なんか生ぬるいロックだった。宇崎のことを「先生、先生・・・」って呼んでいたが、そのあとで「先生って言われているやつにロクなやつはいないんや」なんて毒づいていた。

ジョニー・ルイス&チャーはふらっと現れて、ガンガン演奏して、何も言わずに帰っていく・・・そんな着流し的なロック兄ちゃんが格好良かった。

「ファイティング80’s」では様々なアーティストが出演した。
ロックがサブカルチャーから本筋に移行する時代・・・つまり、ロックが儲かると判断され、レコード会社や事務所、代理店が金をかけ始めた時代にこの番組はロックの見本市の様相を呈していた。
この番組から巣立ったアーティストも多い。
しかし、その中で宇崎率いるダウンタウン・ファイティング・ブギウギバンドだけは尖っていた。
コマーシャルに走らず、言いたいことを言い放つ。
そこには情念、哀歌、憂歌、欲望、裏切り、劣情、刹那、昇天・・・そんな世界が繰り広げられる。
宇崎のもつ作品のパワーと何の後ろ盾もないバンドの生の音が木霊していたのだ。

売れるためにキャッチーな言葉を選びながら誰もが口ずさめる音楽・・・そんな世界とは無縁のバンドであった。
ダウンタウン・ファイティング・ブギウギバンドはこの番組の終了と供に姿を消していくのだが、こんなバンド、今後絶対出ないだろう。

「ファイティング80」でオンエアした数々のバンドの映像は後にDVDで発表された。
アーカイブ的な発表の仕方だったが、懐かしむだけでなく、映像からは当時の息吹が感じられる。
撮影技術も音声も決して良くはない。ライティングも稚拙で妙に暗かったりもするが、その空間で呼吸するバンドやミュージシャンの勢いは、補正されて制作された音楽ビデオとは一線を画すものだし、そんなものと比べること自体ナンセンスだ。
「ファイティング80’s」・・・私の宝物である。
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2015年4月28日
花形
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by yyra87gata | 2015-04-28 22:37 | 音楽コラム | Comments(2)