私は最近テレビドラマを殆ど見ない。大河ドラマとたまに日曜劇場を見るくらい。映画ばかり観ている。
劇場、DVD、飛行機で観る映画、動画配信、地上波放送などだいたい年間で多い時は150本位観ていた。しかし、今年は時間があまり取れず、65本で終わりそうだ。
音日記というくらいだから、音楽映画に絞ってお伝えする。
① ザ・ビートルズ ’64(2024)
鑑賞日:2月20日
(内容)
1964年2月7日、ザ・ビートルズがニューヨークのケネディ空港に降り立った。空港には初めてアメリカにやって来た彼らの姿を見ようと数千人ものファンが駆けつけ、その後開かれた記者会見でのコメントや、人気音楽番組「エド・サリバン・ショー」でのパフォーマンスは、アメリカの人々を大いに熱狂させた。本作ではその様子を中心に、ザ・ビートルズのメンバーたちがかつてないほどの名声を手にするまでの日々をとらえ、音楽業界の分岐点となった彼らの活躍を描く。さらに、新たに撮影したファンたちへのインタビューを盛り込みながら、彼らが作った“時代”をひもといていく。
(感想)
1964年のアメリカにフォーカスしているところが良い。その年の事象や時の人の感想など、ただのロックミュージックではなく、一つの現象として捉えられている。
ファンのエピソードも当時と今を観ることが出来、相当な取材力の勝利。当時の観客を探し出す苦労もあったろう。NHKの「バタフライエフェクト」を見ているようだ。
ザ・ビートルズ4人のインタビューも貴重で、音楽を楽しむ映画というよりドキュメンタリー映画という趣。
② 名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN(2024)
鑑賞日:3月1日
(内容)
2016年に歌手として初めてノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの若い日々を描いた伝記ドラマ。
1961年の冬、わずか10ドルだけをポケットにニューヨークへと降り立った青年ボブ・ディラン。恋人のシルヴィや音楽上のパートナーである女性フォーク歌手のジョーン・バエズ、そして彼の才能を認めるウディ・ガスリーやピート・シーガーら先輩ミュージシャンたちと出会ったディランは、時代の変化に呼応するフォークミュージックシーンの中で、次第にその魅了と歌声で世間の注目を集めていく。やがて「フォーク界のプリンス」「若者の代弁者」などと祭り上げられるようになるが、そのことに次第に違和感を抱くようになるディラン。高まる名声に反して自分の進む道に悩む彼は、1965年7月25日、ある決断をする。
主演:ティモシー・シャラメ
(感想)
ディランフリークのアタシからしてみれば、よくぞ作ってくれましたという作品。
きっと『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)のヒットもあり、ミュージシャンの生き様を描く作品がヒットするという公式が出来たのかもしれない。著作権フリーになるという事もあるだろうし。但し、日本でのディランの認知度はクイーンほどではないから、ヒットはどうかと思うが。
物語は、ディランのデビューから1965年のフォークからロックへと移り変わる様を描いていて、タイトルは「Like A Rolling Stone」の一節であーる。
ディランについては、ドキュメント映画としてスコセッシが撮った「No Direction
Home」があるが、今回の作品はドラマなので、スーズやジョーン・バエズといった恋人たちの心の様も描かれている。一緒に観にいった家人は「ディランって女癖悪いね」と宣ったが、そりゃそうだろ、時代の寵児だったんだから。ま、いい。
主演のティモシー・シャラメはディランに憑依していたね。ディランの物語はある程度知っているので、内容よりもディランの初期の名曲が映画館に響き渡っていることだけでも、アタシは幸せでありました。
ディランの乗るトライアンフの音、痺れるぅ。しかし、数年後に大事故を起こすのでありますが…。それは続編?
そこからザ・バンドとの出会い。「偉大なる復活」という流れでPART2を作って欲しいっす。
③ ウィキッド ふたりの魔女(2024)
鑑賞日:4月19日
(内容)
名作児童文学「オズの魔法使い」に登場する魔女たちの知られざる物語を描き、2003年の初演から20年以上にわたり愛され続ける大ヒットブロードウェイミュージカル「ウィキッド」を映画化した2部作の前編。後に「オズの魔法使い」に登場する「西の悪い魔女」となるエルファバと、「善い魔女」となるグリンダの、始まりの物語を描いたファンタジーミュージカル。
魔法と幻想の国・オズにあるシズ大学の学生として出会ったエルファバとグリンダ。緑色の肌をもち周囲から誤解されてしまうエルファバと、野心的で美しく人気者のグリンダは、寄宿舎で偶然ルームメイトになる。見た目も性格もまったく異なる2人は、最初こそ激しく衝突するが、次第に友情を深め、かけがえのない存在になっていく。しかしこの出会いが、やがてオズの国の運命を大きく変えることになる。
主演:シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ
(感想)
ミュージカル映画。
Wickedの意味は、「邪悪なもの」「悪意」である。
邪悪なふたりの魔女というタイトルであるが3時間近い物語の中にその邪悪さは一向に感じることは出来ない。そして、物語のエンディング画面で後編があることを知らされる。
溜息が出るほどの歌唱力と表現力で圧倒された。前編で理解したことは、2人は人に危 害を加えるほどの「邪悪なもの」ではないということ。
エルファバは見かけがグリンダより醜いが、魔術の師であるマダムモリブルに大事にされたことでグリンダに芽生えた嫉妬のような感情。初めて抱いた敗北感。その感情を正面からエルファバにぶつけるグリンダ。
ボールルームに現れてひとりで踊るエルファバを見てグリンダは後悔する。エルファバは醜い私の気持ちさえも信じてくれていた。必死に踊るエルファバを見ながらWickedになりかけていたのは自分という事に気づくグリンダ。
後編ではどの部分がWickedになるのか、楽しみな作品である。2026年3月まで楽しみに待っていよう。
④ ピンク・フロイド・アット・ポンペイ(1972)
鑑賞日:4月29日
(内容)
1971年10月にイタリアのポンペイ遺跡の“世界遺産”古代ローマ「円形闘技場」で行われた史上初のピンク・フロイドの無観客ライヴ・パフォーマンスを収録したもの。印象深く美しい遺跡を舞台に、「エコーズ」「神秘」「吹けよ風、呼べよ嵐」といった重要な曲が演奏され、円形闘技場の昼夜を捉えた息を呑むほど美しい映像は必見。
(感想)
昔、ビデオで観て、ちょくちょくYouTubeにも登場していた作品。ちょっとボケボケの画像だったが、4Kデジタルリマスターによりクリアな画面になっていた。
若く、勢いのあるメンバーから繰り出す音に溜息が出る。でも、あんな緊張感のある音楽だからか、みんな精神的に病んでいくのだろうね。
ビデオで飽きるほど観ていたから、確認のための時間という感じだった。
映画館は年寄りだらけだったなぁ。
⑤ F1(2025)
鑑賞日:7月25日
(内容)
かつて世界にその名をとどろかせた伝説的なカリスマF1ドライバーのソニーは、最下位に沈むF1チーム「エイペックス」の代表であり、かつてのチームメイトでもあるルーベンの誘いを受け、現役復帰を果たす。常識破りなソニーの振る舞いに、チームメイトである新人ドライバーのジョシュアやチームメンバーは困惑し、たびたび衝突を繰り返すが、次第にソニーの圧倒的な才能と実力に導かれていく。ソニーはチームとともに過酷な試練を乗り越え、並み居る強敵を相手に命懸けで頂点を目指していく。
主演:ブラッド・ピット
(感想)
自動車レース最高峰のF1をアメリカ人が描いたのよ。2013年製作の『ラッシュ/プライドと友情』は事実を元に制作された作品に対し、この作品は現代のF1に伝説の老レーサーが挑むというアメリカンドリーム的な作品。一応実在のマーチン・ドネリーの大事故が映され、そこからの復帰みたいな描き方だけど、往年のF1ファンはマーチン・ドネリーがわかっているから、「それでいいのか?そうなのか?」みたいな違和感があったと思う。
この作品、音楽映画ではないが、オープニングでツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」の印象的なイントロが爆音で鳴り響くのね。映画館に響くツェッペリンっていいね。そのビートの中で画面はF1マシンの豪快な走りですよ。凄まじいまでの疾走感。レース映画ならばこう撮るだろうという絵。もうそれだけで映画館に来てよかったと思いましたわ。しかし、それで終わり。出落ちという感じ。
物語的にはさして面白い展開は無く、人間模様も薄いし、ブラピが随分皺だらけの顔だけど身体は鍛えてんな、なんて思いながら観てました。
アタシが好きなネルソン・ピケやセナプロの時代って70年代後半から15年くらいだからね。シューマッハなんてガキだったし。また、随分とF1カーって大きくなってしまったな、という印象。俊敏な動きというよりパワーで唸らせるという感じか。最近のF1とアメリカ人的なマッチョな作品が比例している気がした。
⑥ スライ&ザ・ファミリー・ストーン/スライ・リブズ!(2025)
鑑賞日:9月17日
(内容)
スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの栄光と苦悩を描く。ポップミュージック界で最も影響力のあるアーティストグループの一つとして台頭していく姿、彼らの黄金期から衰退期をとらえるだけでなく、アメリカの黒人アーティストが成功に伴う重圧とどう向き合ってきたかを浮き彫りにする。
(感想)
ドキュメンタリー映画。
スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンのメンバーのインタビューは貴重だ。ここまで赤裸々に話されることは無かったと思う。また、スライから影響を受けたミュージシャンたちの生の声も聴くことが出来る。衰退期といわれる時期の本人のインタビューもあり、彼の生き様を垣間見ることが出来る。なにはともあれ、スライは天才には間違いない。
黒人アーティストが売れるということはどういうことなのか、売れることによる弊害などにも言及していて、深みのある作品。
人種差別が盛んな1960年代に白人、黒人、男、女の混成グループで駆け抜けたスライ&ザ・ファミリー・ストーンは、時代の寵児であったが、それと引き換えにドラッグに溺れるスライ。きっと神経をすり減らしながらレコード会社やファン、世間の声と戦いながら散っていったんだろう。この作品を見た後にスライの熱烈なファンが死亡説まで出た彼を追いかけ続けた映画『スライ・ストーン』(2015)を見ると感慨深いものがある。追いかけ続けた結果、近年のスライ本人はオランダの小さなクラブでパフォーマンスをしていたが、相変わらず天才だったからだ。
⑦ レッド・ツェッペリン ビカミング(2025)
鑑賞日:9月29日
(内容)
1969年リリースのデビューアルバム「レッド・ツェッペリン
I」で世界を熱狂させ、約12年間の活動でロックシーンに革命を起こしたバンド、レッド・ツェッペリン。その知られざる起源をたどる本作では、1980年に32歳で急逝したジョン・ボーナムの未公開音声をはじめ、メンバーの家族写真やプライベート映像、初期のライブ映像など貴重なアーカイブ素材とともに、オリジナルメンバー自らがバンドの歴史を語る。
(感想)
映画が始まる前にIMAXの宣伝映像が流れたんだけど、そちらの方が迫力の音だったな。ZEPが始まって彼らの音楽が流れたが「しょぼ~」って声に出して言っちゃった。
6月頃に観た映画『F1』の冒頭に突然鳴り響く「胸いっぱいの愛を」の方が興奮したぜ。
紹介されていた彼らのストーリーは全て知ってたので、2時間ZEPに浸れたという事でOK。もっと言うなら、インタビューと演奏は極力分けて、半分をロイヤルアルバートホールのちゃんと同期した演奏を流してほしかった。なぜなら、編集が雑過ぎて絵と音が合ってない事でイライラ。最後のアルバートぐらいでしょ同期してたの。デンマークでのライブも雑な編集だったし。レコードの音に妙なコラージュを載せてもなぁ、って感じ。
あと、IMAXって高いよね。演奏部分だけでも1.5倍くらいの音量を出してもらわないと追加料金払った価値が無い。だいたいドキュメント映画はインタビューやナレーションがいっぱい入るんだからIMAXに向かないんじゃないかな。
でもZEPに罪は無いので、大人しく(笑)家で昔のDVDを大音量で観ます。
⑧ スプリンングスティーン 孤独のハイウェイ(2025)
鑑賞日:11月14日
(内容)
アメリカを代表するシンガーソングライター、ブルース・スプリングスティーンの若き日を描いた音楽ドラマ。
1975年リリースのサードアルバム「明日なき暴走 BORN TO
RUN」で一大センセーションを巻き起こしたスプリングスティーン。それから7年が経った1982年のニュージャージーで、彼は人生の大きなターニングポイントを迎えていた。世界の頂点に立つ直前、スプリングスティーンは成功の重圧と自らの過去に押しつぶされそうになりながらも、わずか4トラックの録音機の前で、たったひとり静かに歌いはじめる。
主演:ジェレミー・アレン・ホワイト
(感想)
アルバム「ネブラスカ」の誕生秘話。抱えている問題は本人しかわからない。
「リバー」という大作が出た後、いきなり弾き語りのこのアルバムが出た時、確かに驚いた。なんて暗いアルバムなんだと。程なくして「ボーン・イン・ザ・USA」が発表され、このアルバムは大ヒット作「USA」の影に隠れてしまった。
「ネブラスカ」に込められた内省的な歌のオンパレードは彼自身の何かへの贖罪なのか。
父親との確執がもたらす歌の世界なのか。まさに人に歴史ありの物語。
私は歌を作る人間の要素が自分では多いと思っているので、スプリングスティーンの楽曲に懸ける気持ちが多少理解できる。無から有を作り出すという作業は並大抵な事では無いのだ。だから、この作品は、歌を作る人間と聴くだけの人間では感想もかなり変わる作品なんだと思う。
⑨ ウォーク・ザ・ライン/君につづく道(2005)
鑑賞日:12月7日
(内容)
カントリー・ミュージシャンのジョニー・キャッシュの伝記映画で、特に彼の2人目の妻となった歌手のジューン・カーターとの関係を描いている。
キャッシュの幼少期、歌手ジューン・カーターとの恋愛、カントリーミュージック界での成功、そして薬物中毒を描いている。
第78回アカデミー賞では、リース・ウィザースプーンが主演女優賞を受賞し、主演男優賞(ホアキン・フェニックス)、録音賞、衣装デザイン賞、編集賞にもノミネートされた。
主演:ホアキン・フェニックス、リース・ウィザースプーン
(感想)
日本では馴染みが薄いジョニー・キャッシュ。アメリカではプレスリーやディランと等しい人気を持つアーティストだ。
60年代から70年代に活躍したが、この頃のアーティストはみんなクスリ漬けで、その毒牙からいかに立ち直るかが一つのポイントになっている。
他の音楽家の映画を見てもたいていクスリにやられている。時代性かな。
妻となるジューンの支えなど、限りなく事実に近しい演出であるが、実際問題として周りの人々のサポートはいかばかりかという気がしてならない。
しかし、ジョニー・キャッシュの最期はジューンを追うようにしてすぐに亡くなっている。その事を「真実の愛」と評価してしまうのは陳腐かもしれないがそれは2人だけが知っていればいいこと。
音楽的に言えば、ジョニー・キャッシュはアメリカンミュージックの重要な1人である事は間違いない。
また、「ジョーカー」での怪演で知られるホアキン・フェニックスが主演だが、途中までその事を知らずに観ていたので、気が付いた時は相当驚いた。歌上手いね。
駆け足で書いてしまいました。
今年もあとわずか。最近は1年が早すぎます。
2025年12月28日
花形




楽器屋さんに行く。60歳の少年は、45年前と全く同じ行動を取る。それは目を輝かせながら楽器を眺めるということ。昔と何も変わっちゃいない。変わったと言えば、少し金銭面に余裕があるくらいか。




