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音楽雑文集


by yyra87gata

何故ビートルズは解散したか

  
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振り上げたこぶしを下ろせず、どうしていいかわからない時ってあるよね。ものにあたってみたり、ペットにあたってみたり。馬鹿正直な人ほどこの現象に陥るのだ。でも怒ることができる人はまだましさ。怒ることもせず、逃避してしまう人も世の中には大勢いると思う。しかも、自分を正当化して周りを巻き込んで・・・。この点になってくると、馬鹿なやつはおいつけない。

 ジョンとポールはとても仲良しだった。少なくても1966年のライブをやっていた頃までは。その後、お互いはそれぞれの才能をそれまで以上に開花させていく。「サージェント・ペパー~」を境にがらっと音楽性が変わったことは、何も録音技術の発展だけに起因するものではない。明らかにポールの中で、何かが変わった。アマチュア時代から好きな音楽として良くも悪くもインスパイヤーされていた、R&BやR&Rに加えてもっとオリジナリティなメロディーが開花していった。残りの3人はまだその変化に気づかず、特にジョンは詞の世界の方にディープダイブしていく。
B・エプスタインが死に、4人だけになったビートルズは、糸が切れた凧のように4人がばらばらに行動するようになる。インドにいくやつ、映画に出るやつ、妻子と離別するやつ、そしてより高度な音楽にのめりこむやつ。
舵取りのいない、まとまりの無いバンドはそれでも修正を図ろうとする。何か4人で一緒に行動すれば元通りの関係になるかもしれない、とポールは独り想う。出した答は「映画」。
関係を修復させるために意図したポールだったが、他の3人は「面白そうだ」という物見遊山で集まり、筋書きの無い実験的な映画に、悪ふざけでもしているかのように出演(「マジカル・ミステリー・ツアー」)。ポールの意図は通じず、逆に以前から3人の中に潜んでいた「ポールは仕切り屋」というレッテルを決定付けられてしまう。でも一番の被害者はそんな映画を見せられた観客であることに4人は気づいていない。そこに彼らの奢りがある。
 この頃からレコーディングでも4人が顔を合わせることが少なくなった。2枚組の通称ホワイトアルバムは、通し番号で綴られたシンプルな装丁である。中には4人のメンバーのアップ写真が4枚入っている。見ようによっては遺影に見える。バラバラの写真。一つのフレームにさえ入らないのか。しかし、ポールはこのホワイトアルバムについて、「もう一度真っ白な状態からやり直したかった」と言っている。
転がり始めた石は、坂道の途中で止めることが困難になってきた。ジョンはヨーコと出会う。ジョージはマハリシ・ヨギと出会う。リンゴは映画三昧(奥さんも女優)。そんな中、テレビの企画で生のビートルズを特集する企画が生まれる。ポールはゲットバック・セッションを提案する。なんとわかりやすいタイトルか・・・。4人はそれぞれの思いで集まった。
ジョンはヨーコを引き連れ、ジョージはセッション2日にしてぶちきれ、脱退を口走る。ポールの意図は仇となりかえってくる。5人目のビートルズとしてジョージはビリー・プレストンという第三者を連れてくることで機嫌が直るというへんてこな解決策。
 ポールの中では「ゲット・バック(戻って来い)」と叫び始めたが、セッションが終了する頃は「レット・イット・ビー(なすがまま)」になってしまった。
 ジョンもジョージもこの頃はいつでも辞めたいと思っていた。2人とも新しいパートナーとニューワールドに旅立ちたかった。
 でも解散を言い放ったのは、意外にもポールだった。バンド継続に力を注ぎ、それでも結果が見えないので、自分の手で息の根を止めてしまった。他の3人は怒った。裁判沙汰にもなった。
 こうやってファンに語られたニュースを綴るとポールはビートルズのためにがんばって、他の3人がビートルズから離れていったみたいだね。
そうだとしても、善悪を語りたがる人が世の中にはいて、ジョンを狂わせたヨーコのせいだとか、インドがビートルズを駄目にしたということを真面目に論じている。アホか。

 私は、原因は良くも悪くもポールにあると思う。なぜなら、ポールは3人と比べて、レベルの違う音楽家だったということだ。ポールのその才能にジョンは途中から気づき始めた。明らかに自分とはレベルが違う、と。そして、タイミングが重なっただけ。東洋の魔女との出会いだ。ジョンはポールから逃避していく。   
いつからジョンは平和主義者になったんだろう。いつからLOVE & PEACEなんて叫ぶようになったんだろう。音楽的に行き場を無くし、丁度ベトナム戦争が激化してきたから、これ幸いと運動に走ってしまったのではないかと勘ぐってしまう。
 ポールは昔から仕切り屋だ。そんなポールに嫌気がさしていたところに、ジョンは戦線離脱。ジョージとリンゴも行き場をなくした。
「ゲットバック・セッション」と呼ばれる映画「レット・イット・ビー」を見ても、しゃべっているのはポールばっかり。あとの3人はやる気が見えず、ジョージにいたってはチョーキングを指摘され、険悪なシーンもある。いやいや、解散の責任は誰にも無い。4人が大金を手にし、30歳という大人になっただけかもしれないな。

 振り上げたこぶしを下ろせず、どうしていいかわからない時ってあるよね。バンドにあたってみたり、世の中にあたってみたり。馬鹿正直なポールほどこの現象に陥るのだ。でもポールのように怒ることができる人はまだましさ。怒ることもせず、逃避してしまうジョンみたいな人も世の中には大勢いると思う。しかも、自分を正当化して平和運動を巻き込んで・・・。この点になってくると、ジョージやリンゴはおいつけない。
2004/12/4
花形
by yyra87gata | 2012-12-12 17:43 | 音楽コラム | Comments(0)