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音楽雑文集


by yyra87gata

ジェイク・H・コンセプションのこと

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 今年も沢山の著名人が鬼籍に入りました。

俳優では松方弘樹さん、根津甚八さん、神山繁さん、渡瀬恒彦さん、藤村俊二さん。女優の野際陽子さん。ミュージシャンではロックンロールの創始者チャック・ベリーやスワンプミュージックの雄、レオン・ラッセル。日本でもかまやつひろしさんといったベテランが次々と倒れました。昭和は遠く成りにけりでありますが、12月に入ってショッキングなニュースが・・・。

サックス奏者のジェイク・H・コンセプションが12月4日に亡くなったのです。81歳。

ジェイクは日本の軽音楽の立役者であり、歌謡曲からロック、フォーク、ポップスとジャンルを超えて活躍したミュージシャンであります。フィリピン出身で1964年に単身来日しており、1970年代中半から大活躍となります。

ひと昔もふた昔も前のサックス奏者は、ジャズに固執するあまり、他のジャンルのミュージシャンとはプレイできない、ましてや演歌をプレイするなんて「魂を売った」というような妙なプライドを持っていたと聞きます。それはそれでいいでしょうが、そんな前時代にジェイクは一人黙々と日本の音楽に溶け込みながら名曲のバックをこなしていきます。

都はるみの「北の宿から」も西城秀樹の「YMCA」も岩崎宏美の「聖母たちのララバイ」も近藤真彦の「ギンギラギンにさりげなく」もみんなジェイクのサックスです。他にも数多くの大ヒット作品を手がけ、いつもニコニコ笑いながら仕事をしていたそうです。

皆さん、思い浮かべてみましょう。先ほどあげた作品。きっとサックスのメロディーが頭に浮かぶと思います。そういうメロディーを吹くことが出来、心に残る音色を出すことが出来るミュージシャンなのであります。

1980年代の渡辺貞夫の言葉

「今、日本で吹いているサックスプレイヤーでジェイクに勝てるミュージシャンはいないね。あいつは凄いよ。なんでも吹けるからね。僕もかなわない」

先日の吉田拓郎の言葉

「レコーディングするでしょ。「タクロー、ダイジョウブ。OKOKマカセテオイテ!」とか言ってサッと終わらせちゃうんだよ。その仕事の早さと出来といったら。凄いミュージシャンだったよ」

以前、山下達郎はサックスプレイヤーをバックにつける時の条件を、その音色と話していました。テクニックではなく、自分の音楽に絡んだときに心地良い音色となるかどうかということ。

まさに、ジェイクは日本のポップスの求める音色だったのだと思います。

そして、ジェイクのサックスは歌物のバックに適していたのでは無いでしょうか。

ジェイクは、1978年にリーダーアルバム『リーサ』を発表しています。

レイ・チャールズの「ジョージア・オン・マイ・マインド」といった定番の曲からコール・ポーターが1929年にミュージカルのために書き下ろした「恋とはなんでしょう(What is this thing called love)」といったスタンダードナンバーまで、日本の一流ミュージシャンを迎え制作されました。

非常に聴き易いアルバムで、とっつきにくいジャズの世界ではない、明るくライトな仕上りとなっていますが、あまり話題にはなりませんでした。インストゥルメンタルよりも歌物のバックで活きるサックスなのだと思います。

丁度この頃、ジェイクは吉田拓郎のアルバム『ローリング30』(1978)の制作に加わっており、「英雄」「裏街のマリア」といったヘビーなファンクサウンドから「冷たい雨が降っている」「素敵なのは夜」といった感傷的なソロまで変幻自在の音を紡いでいます。そして、その後、大々的に始まったコンサートツアーでその姿を私たちの前に見せたのであります。

おおらかな笑顔で両手を広げながらリズムを取り、黙々とサックスをプレイする。時にギターの青山徹や鈴木茂とバトルをする激しいサックスも披露してくれました。

それは、あたかもスプリングスティーンの横で客を威嚇するようにサックスをぶちかましていたクラレンス・クレモンズを髣髴させるものがありましたが、ジェイクの方が笑顔が多い分、人柄が良さそうでした(クレモンズさん、ごめん)。

歌物のバックに生える音なのです!

ジェイクはひっぱりだこのミュージシャンでしたから、まとまったコンサートツアーは1979年~1980年頃の吉田拓郎のツアーぐらいしか活動はなかったのでは無いでしょうか。

そんな彼のプレイを生で観ることができたことは、今となっては幸せなことだと思っております。

艶があり、どこまでも伸びるアルトサックスの音は我々の情感を刺激しました。

レコードのミュージシャンクレジットを見てみましょう。

必ずジェイクの名前を見つけることが出来ると思います。

2017/12/20

花形


Commented by ロージー at 2019-01-19 16:25 x
拓郎のライヴ・アルバム『TAKURO TOUR 1979』収録『されど私の人生』の冒頭を飾るサックスはちょっとないくらいに感動的な響きですね。
Commented by yyra87gata at 2019-01-20 16:06
そうですね。1979年のツアーは私の中では、ベストです。
メンバーもセットリストも最高です。
ジェイクはバンドの守り神のようにドッシリと構え、支えていた事を思い出します。
by yyra87gata | 2017-12-20 17:55 | 音楽コラム | Comments(2)