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「ライブ・ハーレム・スクエア・クラブ1963」 サム・クック

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 洋楽のライブアルバムで後年まで語り継がれる名盤にダニー・ハザウェイの『ライブ』(1971)オールマンブラザース・バンドの『アット・フィルモア・イースト』(1971)とかありますね。他にもBB・キング『ライブ・アット・ザ・リーガル』(1964)、ザ・フー『ライブ・アット・リーズ』(1970)、ディープ・パープル『ライブ・イン・ジャパン』(1972)ボブ・マーレイ&ザ・ウェイラーズ『ライブ』(1975)、など、挙げていくときりがないです。

 それぞれにジャンルの違いはあれど、名盤と語り継がれるにはそれなりの理由があります。それはきっと、誰もが納得するもの・・・抽象的ではありますが、例えばいつもはロックなど聴かない人がそのロックのアルバムを聴いて納得するということではないでしょうか。

 歴史背景やミュージシャンの生い立ちなど関係なく、スピーカーから出てくる音だけに集中し、そこにミュージシャンのソウルを感じ取ることが出来る音であるか、という気がします。

 

 さて、サム・クックです。

私はこの『One Night Stand: Live at the Harlem Square Club 63』(1985)を聴いた時、スピーカーから出てくる音に衝撃を感じました。録音は1963年。マイアミの黒人コミュニティーであるハーレム・スクエア・クラブでのライブです。

バックミュージシャンにはキング・カーティスやコーネル・デュプリーなどが名を連ねています。

 サム・クックは196412月に不慮の事故で亡くなっていますので、年齢は32歳で一番脂の乗った頃のライブではないでしょうか。

それまでにサム・クックは『コパ』(1964)というライブアルバムを発表していますが、これは、ソウルというよりジャズテイストの落ち着いた感じのライブアルバムで、サム・クックには長年このライブアルバムしかありませんでしたが、1984年に20年の時を超えて発見されたライブがこの『One Night Stand: Live at the Harlem Square Club 63』です。

このライブは『コパ』とは180度違う過激なものでありました。

高音のきれいなヴォーカルではなく、汗と激しいリズムで迫ってきます。資料によりますと、この音源は1963年当時の世情と、サム・クックの売り出し方にはそぐわないということで、お蔵入りになっていたとのことです。

では、その音は・・・ソウルやファンクというジャンルではないサム・クックという音であります。ジェームス・ブラウンでもオーティス・レディングでもない泥臭さを感じますが、それはきっとサム・クックが自ら開拓したソウルだからではないでしょうか。その証拠にオーティスはサム・クックを師と仰いでいます。

 サム・クックの売り出し方?と一瞬首を傾げましたが、それはこのライブを聴くまでサム・クックは人種差別に意見を持つ、過激な活動で紙面を賑わすことがありましたが、出てくる音は決して過激ではなかったからです。

もちろんビートを感じる名作もたくさんありますが、透き通るような声で素直なメロディラインに上手く歌い上げるソウルシンガーのイメージでありました。

例えば、「A Change Is Gonna Come」という1964年にリリースされたシングルがありますが、この歌はボブ・ディランの「風に吹かれて」にインスパイアされ作った歌と言われています。

人種差別がなくなる日、いつかそんな日を願って・・・というメッセージが込められています。

カーティス・メイフィールドもそうですが、黒人が意見を言えるのは歌という手段を使うことしか出来なかった社会なのでしょうね。静かなる抵抗とでも言いましょうか。

また、加えてそういう歌たちも白人が作ったレコード会社の餌食となり、正当な報酬を貰えないということも多々あったようで、サム・クックは黒人として初めてレコード会社を作ってしまうほどでした。・・・とにかく行動の人なのです。


このライブアルバムのクライマックスでは、

Nothing Can Change This Love」を真正面から堂々と歌い上げます。

「僕の君への愛は、誰にも変えられないさ」とサム・クックから言われれば、もうお腹いっぱいであります。

そこには人種差別を飛び越えた人間の愛そのものが表現されているのです。

そしてこのアルバムは、サム・クックの持つエナジーと観客の熱気とががっぷりよつに組んだパワーが醸し出す上質なライブアルバムなのであります。当時の判断は黒人パワーに刺激を与えないようにするためのお蔵入りなのでしょうが、最後は愛です。そこを感じ取れなかった、いや、十分に感じ取ってしまうほどのパワーなのかもしれませんね。

そして、このアルバムが発表されてからは私の中のライブ名盤には、必ず頭に浮かぶようになりました。

 

世界は今、コロナウィルスという見えない敵と戦争しています。

サム・クックも人種差別という敵と戦争をしていました。そして、様々な活動を行ってまいりました。

でも、最後は愛なのであります。

愛に勝る武器は無いのであります。

そんなアルバムを聴きながら、今出来ることを模索している今日この頃です。

※アルバム画像は1985年発表のジャケットです。2005年のリイシュー盤とは異なります。

202042

花形


by yyra87gata | 2020-04-02 13:05 | アルバムレビュー | Comments(0)