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音楽雑文集


by yyra87gata

世界3大ギタリスト

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「世界3大ギタリスト!」って言葉を聞いたことありますよね。そうさねぇ、45歳以上の方ならわかるかなぁ・・・

今回はそんな話。

アタシがクラプトンを聴き始めた時期は1978年辺りなので、アルバムで言うと『バックレス』あたりか。確か、駅前の輸入盤セールでジャケ買いしたと記憶している。

何故そんな買い方をしたかというと、音楽雑誌で「世界3大ギタリスト!」というくくりにクラプトンが入っていたからなの。インターネットも無い時代の中学生の頭なんぞは雑誌に書いてあることやテレビやラジオから流れてくる情報を直ぐ“うのみ”にするのは至極当然の流れで、「3大ギタリスト」と言われれば、偉いに決まっているとなるのだよ。増してやレコードジャケットのクラプトンは黒いストラトを抱え、ソファーでゆったりと弾いている!これはすげぇギタリストなんだ、と期待に胸膨らませたわけよ。

で、そのレコードに針を落としたら全然ギターが聞こえない。渋い声の歌ばかり。

?マークの頭になるわな。

じゃ、ジェフ・ベックは?というと当時のベックは『ワイアード』(1976)を発表していたわけなんだけど、ヴォーカルが入ってないから、「これ、フュージョン?」なんて言った記憶がある。やっぱりヴォーカルがあってナンボでしょ。ビートルズだってストーンズだって、当時流行っていたクイーンやエアロだってみんな素敵なヴォーカリストがいたわけで、ジェフ・ベックはギターだけなんだ・・・ちょっと違うジャンルじゃない?なんて思ったわけ。

で、ジミー・ペイジですよ。ロックギタリストのアイコン。手足長いです。レスポールをちんこの上で弾いてます。ウー!イエー!って叫んでばかりのヴォーカルもいます。うるさいドラムもいます。これはもう、ロックギタリストです!と思いきや、当時名画座でよく上映していた「レッド・ツェッペリン狂熱のライブ」の映画を観た時、ひっくり返ったんです。

レコードと全然違うじゃない!なんて下手くそなんだろうって(もともとリズムギターとリフが得意な人だから長いソロなんて取らせたらあかんのよね、罪やわ~)。

大好きだった「天国の階段」だってギターソロは妙なソロになっちゃってるし、指が全然動いてないし、右手と左手が合ってませんよ・・・他の曲もアドリブだか何だかわかんないけどペンタトニックスケールを行ったり来たりしてるだけでしょ。ありゃりゃ・・・って感じ。

当時の「ミュージック・マガジン」で渋谷陽一はなんでこの映画を今上映するのか!なんて怒っていたね。『プレゼンス』(1976)も出ているのに、ライブの映像は1973年のものだし、ライブ音源にもかなり手を入れられているからツェッペリンおたくの渋谷さんでも嫌だったみたいね。

で、「世界3大ギタリスト」ってコピーライトなんだけど、どうやらこれって日本だけ、しかも能天気な音楽誌「ミュージックライフ」が言い出したことみたいね。

そりゃそうだよね、世界3大ギタリストって誰が決めたのって感じだし、たまたまイギリスの60年代に流行したヤードバーズに3人が在籍してたってことだけだもんね。

ひとつのバンドから3人も有名なギタリストを輩出したという事実はあるけど、そのギタリストを「3大ギタリスト」と言いきっちゃうところは、日本人初のビートルズ単独インタビューを成功させた星加ルミ子(編集長ね)のイケイケぶりが伺えるね。

そういえば親戚のおじさんが言ってたもん、

「誰が決めたんだ、3大ギタリストってよ。ジミヘンはどうすんだ?リッチーだって、サンタナだっているだろう。なんだよ3大ギタリストって?」

ま、そんなこんなで、ヤードバーズなんだけど。

本当に時代に翻弄され、名物ギタリストに翻弄され、遊ぶだけ遊ばれて捨てられた可哀そうなバンドって感じ。何がやりたいんだかよくわかんないバンドって印象なんですよ。

だって、日本ではヤードバーズがイギリスでヒットを飛ばしていた1960年代半ばにはリアルタイムでヒット曲は入ってこないし、ヤードバーズを抜けたクラプトンやベックやペイジが有名ギタリストになったから日本ではクローズアップされたって印象でしょ。

はい、それでは、代表的なアルバム紹介です。

まず、ヤードバーズって言ったら

『ファイブ・ライブ・ヤードバーズ』(1964)です。

初期のヤードバーズはシカゴブルースを意識した(デルタブルースの曲も多数やってます)ブルースバンドです。クラプトンのブルース好きとキース・レルフ(ヴォーカル)のブルースハープがバンドの方向性でありますな。

すんげー長い曲を平気で演奏してますから、ぜんぜんテレビやラジオ向きではありません。なんせ、同時期のビートルズは3分くらいの曲をバンバンヒットさせていたわけですから、当時のプロデューサーやレコード会社は、ヤードバーズに「もっとポップでカジュアルな曲にしてよ。ブルースのソロ回しなんて、やってる奴だけが楽しいだろ・・・」なんて言ったか言わないか・・・。

そんで、翌年恐怖の「フォー・ユア・ラブ」なんて曲をヒットさせてしまった!この曲、チェンバロから始まるんですよ!そんなロックある?サイケだよ。

「ヒットさせなけれゃ、おまんまが食えねぇだろ!」って当時のゴメルスキーってマネージャーに言われて渋々クラプトンもレコーディングしたんだけど、そんなんだから、すぐやめちゃった。

で、クラプトンはブルースブレイカーズ~クリーム~ブラインドフェイス~ソロ(ドミノス含む)と転身し1流のエンターテイナーになるわけです。

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後釜に入ったジェフ・ベック(いきさつはいろいろあるようなので、自分で調べてね)。

とにかくトリッキーなギターで、クラプトンのようなわかりやすいブルースではないの。

で、出たアルバムが5日で制作したことで有名な『ロジャー・ジ・エンジニア』(1966)。

変なイラストで有名なアルバムです。ジャケ買いするには勇気がいります。ベックが弾いているという情報だけで買った記憶があります。

で、針を落とすとギターの音量がでかいです。なにかの間違いかと思うくらいうるさいです。で、よーく聞いていくとヴォーカルバランスも低いんですが、ベックの独特のフレーズは、それまで慣れてきているブルースフレーズではないから、耳に残るのかなぁなどと思ってます。フィードバック奏法を多用しているというのも耳に残る要因でしょうか。

その後、ポール・サミュエル=スミスの脱退によりジミー・ペイジが加入することになり、アメリカツアー中にベックは脱退(この辺も調べてね。ここら辺のストーリーにはあまり興味が無いもんで)。でも、脱退後、ベックは自分のグループを作り、ロッド・スチュアートと楽曲を作ったり、ベック・ボガード&ピアスで最強の3ピースと言われたり、ソロになれば、ロックギターのインストゥルメンタル作品というジャンルを作り上げたりと、1流のエンターテイナーになるわけです。

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残されたメンバーで一番後から入ってきたペイジが中心になって『リトル・ゲームズ』を1967年に作ります。

まぁアルバムとしての統一性はあまりなく、シングルヒットを集めました的な当時のイギリスのアルバムの作り方に沿った感じなんだけど、もうヤードバーズも末期状態でジミー・ペイジのとにかくハードな音作りにキース・レルフの貧弱なヴォーカルでは太刀打ちできてないのよね。声がハーモニカと共に埋もれちゃってます。

で、ペイジと共に入ってきたミッキー・モストやピーター・グラントが派手に、もっともっと派手にやろうぜ!みたいな雰囲気になっていって結局バンドは崩壊なんだよね。

ヤードバーズには一番最後に加入したペイジだけが残って、新たにメンバー探し。で、レッド・ツェッペリンになるわけですな(最初はニュー・ヤードバーズって言ってた!)。

ジミー・ペイジはレッド・ツェッペリン解散後、ソロ~ザ・ファーム(VoP・ロジャース)、カヴァーデイル・ペイジ(VoD・カヴァーデイル)~ペイジ・プラント(VoR・プラント)~ツェッペリン再結成。一流のエンターテイナーです。

で、この『リトル・ゲームズ』で、もうツェッペリンの片りんが見えるのね。例えば中近東みたいなアコースティックギターサウンドとか。

アタシは結構このアルバムは好きなんす。ペイジのプロデュース能力と言いましょうか・・・。

で、結論ですが、結局ヤードバーズって何がやりたいか!やりたいことをはっきりと主張できた人だけが、音楽界に残ったってことなんだよね。

クラプトンはヤードバーズ卒業後、ブルースの探求を進め、自らもブルーズと呼ばれるに値するイバラの道を歩むんです。もう、ブルース好きなイギリスの少年ではありません。彼自身がブルースですね。

ベックはとにかくギターを弾いて、好きな自動車修理をしていればいい、という人なんで、ギター奏法の探求を進めましたよね。あんなギターの音を出せるのはベックだけでしょう。1970年代後半からはピックを捨てましたもんね。指で弾いた方がピックを持つ2本の指以外に3本余った指でフレーズ作れるやん!って言ったとか。ピュアすぎますがな。

ペイジはツェッペリンの時は一番ロックギタリストの風情を持っていましたが、今はエプロンを付けると給食のおばさんみたいな顔になってます。ごめん。

この人はツェッペリンの印象が強すぎるので、他で何をやっても比較されてしまいます。だから一生ツェッペリンがいいと思います。

3人の男が通り過ぎたヤードバーズって何だったんでしょうね。

もしかしたら、「世界3大ギタリスト」って言いきっちゃったミュージックライフが、一番主張がはっきりしてたのかもしれませんね。

202139

花形


by yyra87gata | 2021-03-09 18:08 | 音楽コラム | Comments(0)